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M's KOBE

海と山に囲まれた港都・神戸。明治期の開港をきっかけに、映画やジャズ、ファッションなど西洋文化をいち早く取り入れ、モダンでハイカラな街として発展してきました。

神戸新聞では2018年7月から市内9区をひと月ずつ訪ね歩く「マンスリー特集」をスタート。これまで紙面掲載された記事を集めました。神戸らしさを象徴する「海(Marine)」「山(Mountain)」「音楽(Music)」「神戸牛(Meat)」「出会い(Meet)」、そして「マンスリー(Monthly)」の頭文字「M」をあしらった、その名も「M's KOBE」。

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「安いし雰囲気が好き」創業99年、4畳半の立ち飲み店 神戸 2020/02/03

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 JR和田岬駅を降りて、和田神社の鳥居前を真っすぐ進んだ先に、目当ての立ち飲み店があった。創業から99年を数える「木下酒店」(神戸市兵庫区上庄通2)だ。自宅兼店舗の古い木造家屋に、年季の入った看板が掛かる。夕暮れ時、店に明かりがともった。ひとり、またひとりと、馴染みの客たちが暖簾をくぐっていた。

 「おかえり~」。そう言って客を迎えたのは、3代目店主の木下正さん(68)。祖父が1921(大正10)年に開いた店を受け継いだ。

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 手狭な店内は4畳半ほどの広さ。L字型のカウンターは男性客10人ほどでいっぱいになる。「夏場なら12人まで入れるんやけど、冬はみんな着込んでるやろ」と木下さん。それでも「混んできたら、みんな横向きになって詰めたらええねん」と笑う。

 夕方になると、近くで働く人たちでカウンターが埋まった。客は酒を注文し、メニューからアテを探す。冷え込む冬場。定番のおでんが人気だ。木下さんと二人三脚で店を切り盛りする妻の和子さん(68)が、だしから仕込んでいる。一つ90円~110円で、中でもおすすめは、味が染みた大根やロールキャベツ。「スパサラ」など日替わりメニューを含め、どれも手頃な値段で「1000円以内で収まる人がほとんど」という。

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 平日はほぼ来店するという男性客(71)も、おでんに箸を延ばしながら「安いし、店の雰囲気が好きでね」と話す。常連客には「落ち着く」場所のよう。木下さんは「やっぱり仕事や体調の話が多いね。でも暗いことばっかり話してる人はいない。酒の席だし、おいしくなくなっちゃうからね」と教えてくれた。

 以前は午後8時に店を閉めていたが、和田岬線のダイヤに合わせて8時半まで営業することにした。「8時台の最後は36分発。店を半に出たら間に合うから」。木下さんなりの心遣いだ。

 店内の隅に「関係当局の指示により」で始まる断り書きが掲げられているのに気付いた。「酒は冷でしか売れません」「煮たき物の提供はできません」。神戸小売酒販組合が1972年に出したもので、当時の約束事だという。またガス灯など、歴史ある品々も店内に残っていた。

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 来年、店は100周年を迎える。木下さんは「別にお祝いは考えていないよ」と照れくさそう。近年は周辺で働く人の数が減り、1日の客数は約30人と、往時の4分の1近くになった。「周りの景色はみんな変わったが、うちは変わらず店を守るよ」と力を込めた。

 午後3時~同8時半。日曜日と祝日が休み。(喜田美咲)