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M's KOBE

海と山に囲まれた港都・神戸。明治期の開港をきっかけに、映画やジャズ、ファッションなど西洋文化をいち早く取り入れ、モダンでハイカラな街として発展してきました。

神戸新聞では2018年7月から市内9区をひと月ずつ訪ね歩く「マンスリー特集」をスタート。これまで紙面掲載された記事を集めました。神戸らしさを象徴する「海(Marine)」「山(Mountain)」「音楽(Music)」「神戸牛(Meat)」「出会い(Meet)」、そして「マンスリー(Monthly)」の頭文字「M」をあしらった、その名も「M's KOBE」。

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一昔前の映画のような風情 純喫茶ファンに人気の「光線」 2020/02/19

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 新開地商店街(神戸市兵庫区)の北の端、湊川公園に隣接する商業ビル「ミナエンタウン」。ビル内には昭和感あふれるスナックやカラオケ喫茶が目立つが、完成した50年前は趣が違ったという。まずは昼どき、2階の喫茶店「光線」を訪れた。

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 約15席の店内は照明でセピア色に染まり、人の形にくぼんだ椅子も一昔前の映画のような風情だ。切り盛りするのは井上孝男さん(76)と忠子さん(76)夫婦。フルーツパフェやあんみつの食品サンプルが店頭に掲げられているが、孝男さんは「うそっぱちや。作られへんで」と豪快に笑う。

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 ビルは1970年、神戸市が以前の地権者から買い集めた敷地に建設された。2人は地権者だった忠子さんの親戚から頼まれ、店を手伝うために兵庫県姫路市から移住した。「まだ結婚して5カ月やったのよ」と忠子さんははにかむ。

 当時のミナエンは、1階は時計やプラモデルなどの物品販売、2階には飲食店が集まっていたという。「食後にコーヒーでも、という人がよおさん来てくれた」と孝男さんは言う。

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 にぎわいの中心が新開地から三宮へ移り、ミナエンを訪れる人も減った。各店の権利は個人所有だったため、人から人へと売られるうちにすみ分けが崩れ、スナックだらけのごちゃまぜのビルになっていった。

 「純喫茶」ファンに人気の光線だが、夫婦2人、なんとか続けていくのが精いっぱいだという。

 「とにかく客がおらん。『暇』とは、もうちょい忙しいことを言う」。哲学者のように厳かに、孝男さんは口を開いた。(伊田雄馬)