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M's KOBE

海と山に囲まれた港都・神戸。明治期の開港をきっかけに、映画やジャズ、ファッションなど西洋文化をいち早く取り入れ、モダンでハイカラな街として発展してきました。

神戸新聞では2018年7月から市内9区をひと月ずつ訪ね歩く「マンスリー特集」をスタート。これまで紙面掲載された記事を集めました。神戸らしさを象徴する「海(Marine)」「山(Mountain)」「音楽(Music)」「神戸牛(Meat)」「出会い(Meet)」、そして「マンスリー(Monthly)」の頭文字「M」をあしらった、その名も「M's KOBE」。

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うどん店2代目が受け継ぐ“変わらぬ”こだわり 兵庫区の2店 2020/03/02

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 粋な割烹からしゃれた洋食店、激安の立ち飲みまで食通をうならす店が集まる神戸市兵庫区の新開地、平野かいわい。製法、食材、外観、歴史…。こだわりはそれぞれ違えども、暖簾を守り、今に味を伝える名店は多い。2店の「うどん店」はともに父親から店を受け継いだ2代目で、“変わらないこと”にこだわりを持つ。(川崎恵莉子、川村岳也)

■伊勢屋 「昭和」あふれる内外観 素朴な味「しのだ」

 「営業しているの?」。これが第1印象だ。今にも崩れそうな年季の入った建物。のれんは掛かるが、店名も書かれていない。看板にうっすら「うどん」「寿し」の文字が残る。

 うどん店「伊勢屋」(神戸市兵庫区下祇園町)。創業から60年以上、一度も改修をしていないという。店内に入ると、2代目店主の渡邊敏夫さん(71)が笑顔で出迎えてくれた。「おやじが店を始めた時のまま。震災にも台風にも耐えてきた。建物はボロボロやけど、元気なうちは続けたい」

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 壁には27種類のメニューが並ぶ。張り替えてある値段部分以外は茶色に変色している。その一つ「しのだ」に目が止まる。

 「? ? ?」。

 すかさず渡邊さんが「きつねうどんのこと。『しのだ』なんてメニューに掲げる店は少なくなったねえ」と言葉を挟む。伝説のきつねが、現在の大阪府和泉市にある信田の森に住んでいたことが由来という。細めの麺と甘みがある油揚げを使った素朴な味だ。

 店内には、かつて出前に使っていた「岡持ち」のほか、30~40年前のエアコンや黒電話があり、昭和にタイムスリップしたかのようだ。内外観のレアさに、関東など遠方から訪れる客もいるという。

 しのだは370円。

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■たつや エビフライ2尾はみ出るカレー丼 味の決め手はだしの削り節

 「たつや」(兵庫区荒田町2)の売れ筋は「エビカレー丼」だ。丼ぶりからはみ出るほどの大きなエビフライ2尾がカレーの上で存在感を放つ。ミニうどん(そば)のセットで千円。早ければ正午前に売り切れることもあるという。

 見た目のインパクトに注目しがちだが「ベースがしっかりしていないと、ちゃんとした料理にならない」と2代目店主の郡正和さん(39)は自信を見せる。

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 おいしさの決め手はだし。正和さんの父で、初代店主の達弥さんは、開業前、削り節などを製造する会社に勤めていた。今もその製品を使ってだしを取る。削り方やいぶす時間などが異なる削り節がブレンドされ、麺類はもちろん、カレーのおいしさを作り出す。

 開業は1989年。店名は達弥さんの名前から取ったという。「両親がじゃんけんをして父が勝った。母が勝ってたら『しのぶ』になってたかも」と明かす。

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 正和さんが店主になったのは2000年。美容師を目指す専門学校に行っていたが、達弥さんが急死し、後を継いだ。今では父よりも長く、店を営んでいる。「やっと父に近づいてきたね、と言われることもある」と正和さん。「自慢のスタッフと一緒に、お客さんに喜んでもらえる味を伝えていきたい」とほほ笑んだ。たつやTEL078・511・3952