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M's KOBE

海と山に囲まれた港都・神戸。明治期の開港をきっかけに、映画やジャズ、ファッションなど西洋文化をいち早く取り入れ、モダンでハイカラな街として発展してきました。

神戸新聞では2018年7月から市内9区をひと月ずつ訪ね歩く「マンスリー特集」をスタート。これまで紙面掲載された記事を集めました。神戸らしさを象徴する「海(Marine)」「山(Mountain)」「音楽(Music)」「神戸牛(Meat)」「出会い(Meet)」、そして「マンスリー(Monthly)」の頭文字「M」をあしらった、その名も「M's KOBE」。

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保護犬の命、千頭以上救う 神戸のカフェ 2020/03/05

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 愛くるしい小動物を求めてペットショップがにぎわう一方、年間約3万8千頭のイヌやネコが殺処分されている日本。命の危機にさらされたイヌと新たな飼い主のつなぎ役となっているのが、神戸市兵庫区中道通1のカフェ「GUARDIAN(ガーディアン)」だ。運営する秋山文子さん(47)は、自身が保護犬を引き取ったのをきっかけに、これまで千頭以上の命を救ってきた。秋山さんは「ペットショップへ行く前に、まずは保護犬と会ってみて」と呼び掛ける。(伊田雄馬)

 カフェでは大小さまざまな犬種が、リラックスした様子で歩いている。壁にはもらわれていったイヌの写真がずらっと張り出され、まるで卒業アルバムのよう。「これでもほんの一部。うちは毎日が譲渡会やから」と秋山さんは笑う。

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 保健所には野犬や放し飼いの迷い犬、飼い主に飼育放棄されたイヌなどが持ち込まれる。環境省によると、全国の保健所に持ち込まれた犬猫の数は、2018年度で約9万2千頭。返還、譲渡されなかった約3万8千頭が殺処分されたという。

 もともとイヌ好きだった秋山さんは、イヌと飼い主が一緒に楽しめるカフェを新開地商店街で経営していた。転機は6年前。保護犬の譲渡活動に取り組む九州のボランティア団体が、フェイスブック上に投稿した写真に目が留まった。投稿では、殺処分予定の雑種犬を紹介し、飼い主を募集していた。

 「どういう子ですか?」

 気付くと、メッセージを送っていた。「すでに2匹飼っていたけど、もらってみると相性もよかった。『こんな子が殺処分されかけていたなんて』と衝撃を受けた」

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 一つでも多くの「命」を救いたい-。そんな思いで翌年、手狭だった店舗を今の場所へ移転し、本格的な保護活動を開始。飲食代や入場料が寄付となり、気に入ったイヌがいれば連れて帰れる。そんな全国でも珍しい「保護犬ふれあいカフェ」が生まれた。

 だが、運営は常に赤字との戦いだ。予防接種などの医療費だけで年間約700万円が必要になるが、寄付は100万円程度。足りない分はカンパで補っているものの、秋山さんの持ち出しは少なくない。

 それでも活動をやめないのは、「冷たい床の上ではなく、人の腕のぬくもりを感じながら最期を迎えさせてあげたい」からだ。立ち上げから共に働く辻由美さん(46)は「ここで亡くなるイヌには、お客さんたちからたくさんの花が届く。きっと私が死ぬ時より多いわ」とつぶやく。

 飼いきれなくなって山に捨てられた土佐犬、コンビニで保護された迷い犬…。保健所からここに来た約40頭には、いろいろな背景を抱えるが、休みなく世話する秋山さんは「そりゃ、みんなかわいいよ」。だからこそ毎月のように譲渡会を開いては、もらい手を探す。

 「もう飼えない」と、いきなり持ち込んでくる飼い主もいる。基本的には断っているが、やむを得ないと判断した場合には、5万円を引き取り料として提示する。飼育に必要な経費には足りないが、額には理由がある。

 「お葬式に掛かる費用やね。『あなたのしたことは飼い犬を殺したのと同じ。そのことを忘れないで』という、私なりのメッセージです」