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M's KOBE

海と山に囲まれた港都・神戸。明治期の開港をきっかけに、映画やジャズ、ファッションなど西洋文化をいち早く取り入れ、モダンでハイカラな街として発展してきました。

神戸新聞では2018年7月から市内9区をひと月ずつ訪ね歩く「マンスリー特集」をスタート。これまで紙面掲載された記事を集めました。神戸らしさを象徴する「海(Marine)」「山(Mountain)」「音楽(Music)」「神戸牛(Meat)」「出会い(Meet)」、そして「マンスリー(Monthly)」の頭文字「M」をあしらった、その名も「M's KOBE」。

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今、最も“熱い”銭湯 廃業危機乗り越えた「清盛ゆかりの湯」 2020/04/09

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山と川に抱かれた「湊山温泉」=神戸市兵庫区湊山町

 平清盛も疲れを癒やした湯の町・平野(神戸市兵庫区)。天王谷川沿いの路地を上った先にある湊山温泉(湊山町)は、廃業の危機を乗り越え、地元住民らに130年以上愛される。再建後に連発するイベントが注目を集め、昨年には2階に図書室がオープンと、もはや坂の上のパラダイス。「平野に入らずんば、銭湯ファンにあらず」とささやかれる日も近いかも? (記事・喜田美咲、写真・秋山亮太)

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(左)朝陽を浴びつつ、熱い湯船につかる(右)朝日の当たる浴場で極楽気分=神戸市兵庫区湊山町

 福原京時代の温泉については、当時の公卿の日記に記述があり、場所は別荘・雪見御所の北側。そんなことから、天王谷川の両岸にある湊山温泉と天王温泉は、「清盛ゆかりの湯」として長年親しまれてきた。

 だが、利用者の減少など採算悪化により、2004年の天王温泉の廃業に続き、15年には湊山温泉も営業継続を断念。平野の温泉の歴史も幕を閉じるかと思われたところに、静岡県の飲食事業者から救いの手が差し伸べられ、新会社による再出発がかなった。

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(上)図書室「喫泉」では漫画や絵本を満喫(下)受付横の休憩スペース。お芝居の家族団らん場面を思わせる=神戸市兵庫区湊山町

 源泉掛け流しの泉質や効能をうたうのみならず、新たに目指したのは「楽しめる温泉」。故人にぬくもりを届けたいという要望に応えたペットボトル「お彼岸泉」の限定発売、1年の出来事を書いた木片を湯船に浮かべた「除夜の風呂」の開催など、今、最も“熱い”銭湯として注目を集める。

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(左)年季の入ったげた箱。番号と半開きの扉が、ビンゴゲームのカードのようにみえる(右)玄関前の御社(おやしろ)。入浴客の多くが手を合わせる=神戸市兵庫区湊山町

 昨年9月には2階を改装し、66平方メートルの広々とした図書室「喫泉」が誕生した。「知の泉を喫する」というコンセプトで、本棚には文芸書や漫画が7千冊以上並ぶ。「温泉に入って、読書して、さらに朝風呂もできますよ」と店長の阿部大さん(47)。ナイトタイム利用(1800円)はなんと、最大午後9時~午前10時だ。

 過ごし方もお好み次第で、ハンモックやこたつ席に、極めつけは押し入れを改造した「秘密基地本棚」。自称「漫画おたく」の従業員がチョイスした新刊も続々追加されている。新型コロナウイルス感染症の影響で遠方からは訪れにくい状況だが、阿部さんは「銭湯になじみのない若い世代が足を運ぶきっかけになれば」と期待する。

 入浴は午前5時~午後11時半。入浴料700円、小学生230円(「喫泉」は別料金)。水曜定休。新型コロナ対策として、施設内は定期的に消毒している。湊山温泉TEL078・521・5839