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M's KOBE

海と山に囲まれた港都・神戸。明治期の開港をきっかけに、映画やジャズ、ファッションなど西洋文化をいち早く取り入れ、モダンでハイカラな街として発展してきました。

神戸新聞では2018年7月から市内9区をひと月ずつ訪ね歩く「マンスリー特集」をスタート。これまで紙面掲載された記事を集めました。神戸らしさを象徴する「海(Marine)」「山(Mountain)」「音楽(Music)」「神戸牛(Meat)」「出会い(Meet)」、そして「マンスリー(Monthly)」の頭文字「M」をあしらった、その名も「M's KOBE」。

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関西の軽井沢といえば… 神戸市北区の玄関口・鈴蘭台 2019/08/17

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 「関西の軽井沢」。こんなキャッチフレーズで分譲が始まったのは戦前の1928(昭和3)年のことだ。これだけでは、どのまちのことを言っているのか、すぐに想起できる読者は少ないのでは。さらに説明を加えると、海抜約300メートルの高原的風土、空気清浄、水質良好、自然にあふれた景観…。最大の売り文句は「(当時の)神戸の中心地から電車で10分」の距離感だ。「そう!」。神戸市北区の玄関口・鈴蘭台。まちの魅力を再発見する散策を始めてみたい。名付けて「鈴ぶら」(伊田雄馬)

 神戸電鉄新開地駅から5駅目。坂あり、トンネルあり、まるで山岳鉄道のような起伏に富んだ鉄路を進み鈴蘭台駅にたどり着く。

 昨年9月、北区役所新庁舎や商業施設、バス乗り場などが入る再開発ビル(7階)が完成し、駅前の風景は大きく変わった。

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 かつて山田村小部の一部だった鈴蘭台。海側に比べ夏の気温が2~3度低い冷涼な気候に目を付けた神有鉄道(現・神戸電鉄)が、宅地開発を主導し、28年の鉄道開業に合わせ「関西の軽井沢」「(神戸の)避暑地」として売り出すと、のどかな田園風景に富豪たちの別荘が立ち並んだ。

 鉄道開業時の駅名は「小部駅」で、2年後に公募で現在の駅名になった。高原に咲く清楚な花「スズラン」をイメージし、命名されたという。

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 近くで生まれ育った男性(83)=北区=は「昔の鈴蘭台は水田ばかり。冬はよく雪が降って、竹ぞりで遊んだもんや」と振り返る。男性の父は宅地開発に伴い、鈴蘭台周辺に所有していた数ヘクタールの農地を手放し、男性自身は鈴蘭台駅前で文具店を経営しながら地域の発展を見守ってきた。

 「元町より早くダンスホールが完成し、料理旅館もあった。鈴蘭台駅前の広場で“ミス鈴蘭台”を決めたり、映画の上映会をしたりと、活気があふれていた」と当時を懐かしむ。

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 開発から約90年。まちからは少しずつ若者が消え、地域が一つになる行事も減ってきた。

 駅前商店主らが約15年前に立ち上げた「鈴蘭台駅前元気UPプロジェクト」では2019年度、「まち学び」と題した講座を始めた。喫茶店ではコーヒーの入れ方、中華料理屋では豚まんの包み方などを教え、住民が商店に親しむきっかけをつくる。7月末には同プロジェクト初の公開会議が駅前の再開発ビルで開かれ、公開スペースで喫茶店主や高校教諭、市職員ら約10人が街の活性化に向け、意見を出し合った。

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 司会は美容師の男性。大きな紙には「ウォークラリー」や「ビアガーデン」、オリンピックにちなんだ「鈴蘭ピック」など、イベント案が次々書き込まれた。足を止めて「ちょっと一言」と意見を述べる買い物客もおり、会議は盛況のうちに終わった。

 「アイデアを実現につなげるため、今後も会議を継続していく」と男性。街を再び活気づけようと、商店主らが動き出している。