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M's KOBE

海と山に囲まれた港都・神戸。明治期の開港をきっかけに、映画やジャズ、ファッションなど西洋文化をいち早く取り入れ、モダンでハイカラな街として発展してきました。

神戸新聞では2018年7月から市内9区をひと月ずつ訪ね歩く「マンスリー特集」をスタート。これまで紙面掲載された記事を集めました。神戸らしさを象徴する「海(Marine)」「山(Mountain)」「音楽(Music)」「神戸牛(Meat)」「出会い(Meet)」、そして「マンスリー(Monthly)」の頭文字「M」をあしらった、その名も「M's KOBE」。

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現存する日本最古の民家 神戸市北区の「箱木千年家」 2019/09/14

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 神戸電鉄箕谷駅から、市バス111系統に揺られ、神戸市北区山田町の西端、衝原へ。お目当ては、現存する日本最古の民家「箱木千年家」(国指定重要文化財)だ。兵庫県三木市との市境に広がるつくはら湖の湖畔にあり、高さ約8メートルの入り母屋造りと重厚な茅葺き屋根は壮観だ。(村上晃宏)

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 建築年代を巡っては諸説ある。箱木家に残る文書には平安初期の「806年上棟」と記される。一方で専門家らによると、現在の建築様式は室町時代と推定されるという。

 「家系図をひもとくと、藤原鎌足のひ孫に行き着く」と話してくれたのは、第51代当主の箱木眞人さん(87)。江戸初期に「古くからある」との意味を持つ「千年家」の屋号をもらった記録が残るという。

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 屋内は静寂とひんやりとした空気に包まれ、床や戸板はちょうなで削った木材の質感が残る。鉄のように硬い柱や土間のかまどなど、時代の風雪に耐えてきた重みを体感できる。

 実はこの集落、呑吐ダム建設に伴い水没し、千年家も1977年、現在の場所に移転を余儀なくされた。移転前の住宅で育った箱木さんは「冬は寒いし、屋根のふき替えも大変」と振り返りつつ、「まさか国の文化財に指定されるとは」と目を細める。

 今年5月には世界茅葺き会議で来日した7カ国の職人が千年家を視察。「重ねた年月を感じさせない美しさだ」と驚嘆し、茅葺き技術や文化財保全などを学んだ。箱木さんは「乾燥しやすい土地と良質の水が長持ちの秘けつ」と説明しながらも「家の隅々に先祖の苦労がしのばれる。文化財を守り続ける大変さも一緒に共有したい」と話した。

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 市バス111系統の終着点・衝原から折り返し、新神戸トンネル近くのバス停「小橋」から徒歩5分。“重文銀座”9つ目のお宝は、江戸時代に建てられた「下谷上農村歌舞伎舞台」だ。花道の一部が180度回転し、反り橋が現れる仕掛けは全国でも例のない本格的な歌舞伎舞台とされ、国の重要有形民俗文化財となっている。

 山田の郷にある13の集落は、それぞれに歌舞伎舞台があって、今でもこの下谷上をはじめ、少なくとも7カ所が残っている。「農民が農閑期などに自ら演じる文化が江戸時代に広まった」と山田民俗文化保存会副会長の新田嘉己さん(73)。「演じ手不足で途絶えた時期もあったが、最近は住民有志らが再興や保存に取り組み始めた。特に子どもらの熱演は素晴らしい。この郷に残る伝統をいつの世にも継承していきたい」と力を込めた。