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M's KOBE

海と山に囲まれた港都・神戸。明治期の開港をきっかけに、映画やジャズ、ファッションなど西洋文化をいち早く取り入れ、モダンでハイカラな街として発展してきました。

神戸新聞では2018年7月から市内9区をひと月ずつ訪ね歩く「マンスリー特集」をスタート。これまで紙面掲載された記事を集めました。神戸らしさを象徴する「海(Marine)」「山(Mountain)」「音楽(Music)」「神戸牛(Meat)」「出会い(Meet)」、そして「マンスリー(Monthly)」の頭文字「M」をあしらった、その名も「M's KOBE」。

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茅の魅力や良さ発信 神戸と世界つなぐ茅葺き職人の挑戦 2019/10/23

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 全国屈指の約700棟の茅葺き民家が残る神戸市北区は、「茅葺きの里」と呼ばれる。現存建物で日本最古と推定される「箱木家住宅」(国指定重要文化財)や、江戸中期の「内田家住宅」(県重文)なども含まれるが、保存の難しさから、この20年で200棟以上が失われた。相良育弥さん(39)は2008年、茅の葺き替えを行う職人集団「くさかんむり」(淡河町)を立ち上げた。技術と魅力を後世に伝えようと、国内外を飛び回る。(喜田美咲)

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 8月中旬。兵庫県三木市内に屋根の葺き替えを行う相良さんの姿があった。竹や木の骨組みにススキやチガヤの束を縄で結んで重ねていく。向きを合わせたり、束を乗せた屋根をたたいたりして形を整えていく。

 「職人になったばかりの頃は、力まかせに茅を固めていた」と笑う相良さん。経験を積み重ねていくうち、適度に空気をはらませることが、雨漏りを防ぎ、長持ちさせるコツだと学んだ。

 「すべて経験が頼り。頃合いが難しい。だからこそ面白い」

 くさかんむりに所属する職人は7人。1棟の葺き替えに1カ月~1カ月半かかるため、年間に手掛けられるのは8棟ほど。今も10棟以上の顧客が順番を待つ。

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 平均的な大きさの屋根を一つ葺き替えるには、10トントラック2杯分の茅が必要だという。

 かつて、集落では共同で茅場を営み、刈ったススキを屋根裏などに保管して葺き替えに備えていた。しかし、それも少なくなり、茅の消費は現在、県内で約1割にとどまる。

 神戸市は2016年度から淡河町の市有地約1万平方メートルを茅場に整備しているが、敷地全体でもせいぜい1棟分しかまかなえない。材料を阿蘇や富士山の麗から仕入れるため、運送費がかさむという。

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 「大地に生える草が屋根になり、古くなった茅は肥料として大地に返る。草を使いこなし、自然と共生しながら受け継がれてきた暮らしを守りたい」

 相良さんの茅への思いは壮大だ。目指すは、循環型社会の実現。

 ただ、所有者の高齢化で管理ができなくなったり、葺き替え費用がかさんだり、若手の職人が少なかったりして、茅葺き民家は徐々に姿を消しつつある。

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 相良さんは、ワークショップの開催のほか、海外の職人との交流、茅葺き建築の先進地・オランダへの視察を続ける一方で、壁一面を茅で彩る作品や看板の一部に茅を施すモダンなデザインも考案。東京からの発注も増えてきた。

 「茅の魅力、かっこよさ、使い勝っての良さを発信し、住みたいと思ってもらうことが大切」と相良さん。北区と国内、そして世界をつなぐ、くさかんむりの挑戦は続く。