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M's KOBE

海と山に囲まれた港都・神戸。明治期の開港をきっかけに、映画やジャズ、ファッションなど西洋文化をいち早く取り入れ、モダンでハイカラな街として発展してきました。

神戸新聞では2018年7月から市内9区をひと月ずつ訪ね歩く「マンスリー特集」をスタート。これまで紙面掲載された記事を集めました。神戸らしさを象徴する「海(Marine)」「山(Mountain)」「音楽(Music)」「神戸牛(Meat)」「出会い(Meet)」、そして「マンスリー(Monthly)」の頭文字「M」をあしらった、その名も「M's KOBE」。

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神戸・水道筋掃除して26年 ほうき手に洋服店会長 2018/08/01

記事

 神戸市灘区水道筋にある商店街の一つ「エルナード水道筋」には、26年間、ほぼ毎日続く光景がある。

 同商店街「ゑみや洋服店」の江見義麿会長がほうきとちり取りを手に、午前8時半から約1時間、アーケードを歩き回る。「今日はええ天気やね」。たばこの吸い殻や紙くずなどを拾いながら、行き交う住民らと言葉を交わす。

 「いつも声を掛けるから、みんなすっかり友達や。名字を知らん人も多いけど」と笑う江見さん。掃除を始めた時期は1992年にまでさかのぼる。地域と一緒に発展する洋服店にしたい、と思い立ったという。

 最初は、自分の店の前だけだった掃除の範囲はいつしか拡大。今では洋服店の従業員らと4人で周辺の道路計約100メートルを清掃して回る。活動が続く理由を「趣味みたいなもん。昔はみんな店先を掃除していた。そういう文化があってん」と飾らずに語る。

 黙々とこなしていた作業も、阪神・淡路大震災をきっかけに、住民らに積極的に声掛けをするように。被災しうつむく人たちを元気づけようとしたのだそうだ。あのとき声を掛けてくれてありがたかった-。今でも時々そう言われる。

 ふと、ごみを掃いていた江見さんがほうきを脇に置き、軍手を外す。「おはよう、今日はご機嫌やね」。親と保育園に向かう子どもとハイタッチ。多い日には30組もの親子を見送る。

 掃除が終わり、午前10時の開店時間が近づく。軒を連ねる店舗のシャッターが続々と開く。いつもと同じ商店街の一日が始まる。(那谷享平)