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M's KOBE

海と山に囲まれた港都・神戸。明治期の開港をきっかけに、映画やジャズ、ファッションなど西洋文化をいち早く取り入れ、モダンでハイカラな街として発展してきました。

神戸新聞では2018年7月から市内9区をひと月ずつ訪ね歩く「マンスリー特集」をスタート。これまで紙面掲載された記事を集めました。神戸らしさを象徴する「海(Marine)」「山(Mountain)」「音楽(Music)」「神戸牛(Meat)」「出会い(Meet)」、そして「マンスリー(Monthly)」の頭文字「M」をあしらった、その名も「M's KOBE」。

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「上田能楽堂」の観世流能楽師 シテ方笠田祐樹さん(28) 2018/10/29

記事

■成長続ける若き担い手

 長田神社(神戸市長田区長田町3)から東へ徒歩約5分。住宅街にたたずむ「上田能楽堂」(同区大塚町2)では、若手からベテランまで、神戸の能楽師たちが日々稽古に励み、舞台に挑む。

 曽祖父から続く、能楽師一家に生まれた。初舞台は2歳だが、須磨区の実家には、扇子を持った祖父の稔さんと上田能楽堂の舞台で遊ぶ、1歳の時の写真が残る。「能楽師になれ」と言われたことは一度もないが、扇子や能面などで遊ぶうち、自然と志すようになった。

 学生時代は能の稽古に励む一方、ヨット部でセーリング競技に打ち込んだ。高校2年の夏、全国高校総合体育大会(インターハイ)で優勝。大学1年の全日本学生選手権(インターカレッジ)では、団体3位入賞を果たした。

 しかし、能の稽古に専念するため、セーリングは大学1年生で引退。プロの能楽師を目指す以上、部活をやめて稽古の時間を増やすことは自然な選択だった。「悔いや未練は全くなかった」と振り返り、「反抗期は確かにあった。でも、舞台に立つのが嫌だと思ったことは一度もない」と言い切る。

 大学を卒業後、上田貴弘さんの内弟子として、本格的にプロへの道を歩み出した。師匠の身の回りの世話、稽古、舞台公演と多忙な日々の中、夏休みに子ども能楽教室を開くなど、能を広める活動も積極的に続ける。

 舞台に立てる。憧れの役ができる。シンプルな動機で舞台に上がった少年時代。今は舞台が終わるたび、冷静に反省点を振り返り、貪欲に成長を追い求める。その原動力は一貫している。

 「能が好きなんです」(真鍋 愛)