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M's KOBE

海と山に囲まれた港都・神戸。明治期の開港をきっかけに、映画やジャズ、ファッションなど西洋文化をいち早く取り入れ、モダンでハイカラな街として発展してきました。

神戸新聞では2018年7月から市内9区をひと月ずつ訪ね歩く「マンスリー特集」をスタート。これまで紙面掲載された記事を集めました。神戸らしさを象徴する「海(Marine)」「山(Mountain)」「音楽(Music)」「神戸牛(Meat)」「出会い(Meet)」、そして「マンスリー(Monthly)」の頭文字「M」をあしらった、その名も「M's KOBE」。

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“神戸の奥座敷”に遊園地? 当時の「丸山」の面影追う 2018/11/01

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 NHKの人気番組「ブラタモリ」ばりに、坂道と階段のまち「丸山」(神戸市長田区)を歩き回った。その中で最も興味を持ったのは「戦前、この地に遊園地があった」との話だった。「どこにそんな場所が?」。驚きと同時に、疑念も抱きつつ、丸山地区住民自治協議会の昔の会報に目を通す。桜咲く池のほとりに人が集う写真とともに「昭和7年 丸山遊園地完成」の文字が…。当時の様子を知る住民を探し、話を聞くしかない!(石川 翠)

 長田区丸山町2の一角。今は市総合療育センターになっているこの場所に遊園地はあった。神戸の奥座敷として、旅館や温泉場が立っていたのと同時期。神戸市の人口増加に伴い、大正末ごろから「神戸土地株式会社」が開発に乗り出した。1928(昭和3)年、神戸電鉄有馬線に鷹取道(現・丸山)駅が開通し、その4年後の32(昭和7)年に遊園地はオープンした。

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 「遊園地と言っても観覧車や乗り物はないよ」

 当時を記憶する男性(89)=同市長田区=は振り返る。父親が同社に勤務していたことからこの地で生まれ育った。「私ら子どもは駆け回って遊んでたけど、芸者を連れて花見なんかする大人たちもたくさんいてました」

 大きな池沿いに遊歩道が整備され、ぼんぼりが立ち並んだ。春は桜の名所として大人たちがお花見を楽しんだ。アヒルやカモなど小鳥が飼われているミニ動物園のようなエリアやブランコなどの遊具もあった。グラウンドに設けられた土俵では大相撲の巡業も行われ、映画の上映などイベントも多かったという。

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 第2次世界大戦中、悲しい歴史も刻まれた。

 42年に最大600人のオーストラリア兵が収容された捕虜施設「大阪俘虜収容所神戸川崎分所」となり、少なくとも51人が亡くなったという。

 家が近くだった丸山地区住民自治協議会の冨沢孝会長(81)は、小学3年生のころ、断水した際に井戸から収容所まで水を運んでいた兵士たちに水を分けてもらったことを覚えているという。

 遊園地としては10年足らずと短命。男性は「優雅な雰囲気で地域全体が明るい。一番いい時代やった」と懐かしむ。

 市総合療育センターを訪ねると、秋晴れの空の下、子どもたちが園庭でにぎやかに遊んでいた。遊園地だったころの面影はないが、当時も子どもたちの楽しそうな声が響き渡っていたのだろうと想像してみた。