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M's KOBE

海と山に囲まれた港都・神戸。明治期の開港をきっかけに、映画やジャズ、ファッションなど西洋文化をいち早く取り入れ、モダンでハイカラな街として発展してきました。

神戸新聞では2018年7月から市内9区をひと月ずつ訪ね歩く「マンスリー特集」をスタート。これまで紙面掲載された記事を集めました。神戸らしさを象徴する「海(Marine)」「山(Mountain)」「音楽(Music)」「神戸牛(Meat)」「出会い(Meet)」、そして「マンスリー(Monthly)」の頭文字「M」をあしらった、その名も「M's KOBE」。

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ロボット開発に婦人服 町工場の底力 長田  2018/12/25

 プロジェクトN(ながた)の最終回は、小さな事業所や町工場にスポットを当てる。2016年の総務省の統計によると、長田区内には5544もの事業所(自治体などを除く)があり、3万9623人が働く。製造業は市内で唯一千を超え、「ものづくりのまち」であることを印象付ける。国内シェアのトップを占める商品や、世界にくい込む中小企業も数多くある。「下町ロケット」ならぬ「長田ロケット」を地で行く四つの会社、店舗を2回に分けて紹介する。(村上晃宏、真鍋 愛)

■ユニークロボでまちおこしを ロボット開発会社「ピノキオ」

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 左右に揺れる体と連動し、一歩ずつ前へ進む二足歩行のロボット。「ホンダのASIMOを目指すと、関節ごとに動力が必要で費用が掛かる。体と脚を連動させて動かせば安くて簡単」と井辺智吉社長(67)は話す。

 徳島大学工学部を卒業し、三菱重工業に就職。原子力発電所の外壁検査や舗装の作業用ロボット開発に携わったが、「地域のまちおこしに役立ちたい」と、1998年に独立した。

 クレーンゲーム感覚で遊べる金魚すくいロボ▽楽器演奏ロボ▽モデル歩きロボ▽建物の壁を塗装するロボ-。ユニークさと実用性を兼ね備えたロボットが並ぶ。

 開発は試行錯誤の連続。走るロボットを作ろうとしたが、その場でジャンプすると、後方に跳んでしまう。自身をロボットと思い込み、何度も跳躍をして脚の関節の動きや重心の位置、力加減を確認し、次の段階につなげる。

 従業員は井辺社長のみ。今は、スマートフォンなどで遠隔操作や通信ができる二足歩行ロボットを開発中。「外出が不自由な高齢者や子どもらに夢を与えたい」。研究熱は高まるばかりだ。

■オーダーメイドでとっておきの婦人服作り ブティッククィーン

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 「長田のものづくり」と聞いて、婦人服を思い浮かべる人は何人いるだろう。客の「こんな服がほしい」に応え、阿多ツヤ子さん(69)と縫製の「神戸マイスター」堺幸子さん(70)が生地を仕入れ、おしゃれな一点物に仕立てていく。

 約60年前、ツヤ子さんの夫・澄夫さん(69)の母が長田で洋裁店「かもめ」を開業。ツヤ子さんは同店で修業を積み、布地店で審美眼を鍛えた澄夫さんと独立、三宮高架下などで店を構えた。阪神・淡路大震災を機に長田に戻り、堺さんと共同でアスタくにづか1番館に今の店を開いた。

 開店から2年ほどは、震災で着る服を失った女性たちから月10着ほど注文が入った。型紙から作るオーダーメード服の着心地の良さが評判となり、阪神間のマダムがこぞって買いにくることもあった。

 5年前から、ツヤ子さんと堺さんによる洋裁教室も始めた。生徒は納得のいく服を追求し、針を進める。長田の下町で、今日もとっておきの1着が生まれている。