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M's KOBE

海と山に囲まれた港都・神戸。明治期の開港をきっかけに、映画やジャズ、ファッションなど西洋文化をいち早く取り入れ、モダンでハイカラな街として発展してきました。

神戸新聞では2018年7月から市内9区をひと月ずつ訪ね歩く「マンスリー特集」をスタート。これまで紙面掲載された記事を集めました。神戸らしさを象徴する「海(Marine)」「山(Mountain)」「音楽(Music)」「神戸牛(Meat)」「出会い(Meet)」、そして「マンスリー(Monthly)」の頭文字「M」をあしらった、その名も「M's KOBE」。

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“ごった煮”の文化が長田の魅力 下町余情座談会 2018/12/27

記事

長田について熱く語り合う参加者=神戸市長田区二葉町7、ふたば学舎(撮影・後藤亮平)

 「長田マンスリー 下町余情」はいよいよ大団円。マンスリー取材班は、まちのリーダーや若者に区の魅力や課題を語り合ってもらうトークイベントをふたば学舎(神戸市長田区二葉町7)で開催した。その名も「昼から生ナガタ!」。住民同士の交流や震災復興後のイベントの在り方、長田の将来像について意見を交わした。(まとめ・久保田麻依子)

※下町余情座談会 参加者の横顔

 -区との関わりと、みなさんが思うまちの印象は?

 加藤 長田は「下町」が特徴だと思っていたが、区民との会話のなかでよく出てくる「粉もん」や町工場、外国人など“ごった煮”の文化こそ魅力だと気付いた。長田の人はフレンドリーで、人とのつながりを大切にする生きざまが根強い。

 東 私は区内の市場で漬物の商売をしていたが、阪神・淡路大震災で店も自宅も失った。仮設店舗の立ち上げを手伝った後、市の委託を受けて古い写真を整理保存する事業に携わっており、区内すみずみまで歩いて調査している。

 岡田 3代続いて生粋の長田っ子。大阪や関東でライブハウスの運営などをしていたが、震災を機に「音楽」をテーマに復興に取り組み、2009年からは鉄人28号をコンセプトにまちおこしを行う「KOBE鉄人プロジェクト」の活動をしている。

 中村 長田で勤めて35年になる。大学では02年、学生と地域の橋渡しをしてまちづくりに関わる「地域交流センター」を立ち上げた。学生たちにとって、長田のまちが単なる学び場・通過駅ではなくて、地域に住むおもしろい人たちと出会う場にしていく仕掛けづくりをしていきたい。

 岡本 大学では自治会長を務めたり、市の成人お祝いの会のスタッフをしたりした。石巻商業高校(宮城県)が震災を学ぶ修学旅行で訪ねてきたときには、学生の立場から歴史や文化を紹介した。現在はアスタくにづかの子育て支援施設「KIT」(久保町6)で、小学生の放課後学習支援に携わっている。

 小笠原 2年半前、結婚を機に埼玉県川口市から神戸に移住した。現在は生後5カ月の男の子ママ。長田にはおせっかいな近所の人や拠点が充実していて、人の手を借りながらさまざまな経験ができる、子育てにぴったりの場所だと思う。子育てを通じまちのことを知っていきたい。

 -長田区は南北に長く、真野や丸山は全国的に住民自治組織がいち早く形成された先進地区でもあった。昔は地区同士の交流が盛んだったが、今はないように感じる。

 東 かつては、真野地区と丸山地区の住民同士が餅つきやバーベキューをするなどの交流があった。しかし、震災以降は組織が弱体化して接点が薄れてしまった。加えて、現在は北部のバスや鉄道は兵庫区方面に向かうため、新長田周辺に買い物に行く人が減ってしまった。

 加藤 長田神社のお祭りには北も南もなく、みんなが参加する。また、獅子ケ池の植物を南の地区の小学生が植樹する活動も行われている。交流も大切だが、地域ごとに特色があって、それぞれが尊重しながら長田らしい魅力を発信し続けていくことに重点を置いてもいいのでは。

 岡田 丸山で生まれ育った。幼い頃は新婚カップルの移住が盛んで、子どもたちであふれていた。中学ぐらいまでは買い物や遊ぶ場所も区内で完結していた。私や家族のように“長田ラブ”の人が多いが、一方で他から来た人を寄せ付けない、排他的になってしまうのも課題だと感じる。

 -琉球祭や三国志祭、長田神社のぽっぺん市など、多彩なイベントがある一方で、地元の参加が少ない印象を持つ。活気のあるイベントを続けていくには、どんな仕掛けが必要か。

 中村 長田の飲食店や個人商店は組織化されておらず、まとまりに欠ける印象がある。だからイベントをしても地元の店の参加率が低いのでは。イベントが豊富なのは長田らしさでもあるので、区外からお客さんを呼び込むためにも、行事の集約が必要だと思う。

 岡田 運営側の意見で言うと、イベントをする目的は、メディアに注目されて長田の認知度を上げること。鉄人ビアガーデンは地元の店しか参加できない、といった条件もあるので、一概に地元の出店が少ないとは言えない。一方で復興事業の補助金で「イベントをやり過ぎた」というのも本音。出店者が高齢化して、疲弊している状況もあるので、今一度テコ入れは必要だと考えている。(つづく)

■加藤久雄(かとう・ひさお)さん 長田区長。1962年、大阪府高槻市出身。市役所入庁後は企画調整部長や観光局専務理事を経て2018年4月から現職。

■東 充(あずま・みつる)さん 神戸アーカイブ写真館館長。1944年、灘区出身。趣味は登山と六甲山仲間との歴史の掘り起こし。

■岡田誠司(おかだ・せいじ)さん KOBE鉄人プロジェクト事務局長。1959年、長田区生まれ。ライブハウスのプロデュース業務に携わった後、鉄人28号モニュメントの建設などの企画運営を行う。

■中村忠司(なかむら・ただし)さん 神戸常盤大学地域交流センター長。1960年、淡路島生まれ。83年に大学(当時は短期大学)に入職し、法人本部長などを歴任。

■小笠原 舞(おがさわら・まい)さん 保育士起業家。1984生まれ、長田区在住。0歳児のママ。合同会社こどもみらい探求社・asobi基地代表。

■岡本 誠(おかもと・まこと)さん 神戸常盤大学こども教育学科4年生。1996年、灘区出身。来春より小学校教員として活躍予定。

■司会 神戸新聞報道部デスク 藤原 学