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M's KOBE

海と山に囲まれた港都・神戸。明治期の開港をきっかけに、映画やジャズ、ファッションなど西洋文化をいち早く取り入れ、モダンでハイカラな街として発展してきました。

神戸新聞では2018年7月から市内9区をひと月ずつ訪ね歩く「マンスリー特集」をスタート。これまで紙面掲載された記事を集めました。神戸らしさを象徴する「海(Marine)」「山(Mountain)」「音楽(Music)」「神戸牛(Meat)」「出会い(Meet)」、そして「マンスリー(Monthly)」の頭文字「M」をあしらった、その名も「M's KOBE」。

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営業わずか5年 神戸にあった“幻の遊園地”を追う 2019/12/07

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オープン当初の「アリバシティ神戸」=神戸市西区井吹台西町1(同市提供)

 三つの願いをかなえてくれるランプの精、空飛ぶじゅうたん、砂漠の中のきらびやかな王宮-。そんなアラビアンナイトの世界観を表現した遊園地が、20年以上前に神戸市西区にあった。その名も「アリバシティ神戸」。西神南ニュータウンが開発された1990年代、たった5年だけ営業していた“幻の遊園地”だ。その姿を追った。(伊田雄馬)

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アラビア風の衣装をまとった踊り子=神戸市西区井吹台西町1(同市提供)

 インターネットによると同遊園地は、西区井吹台西町1の地下鉄西神南駅前に広がっていたという。そこには現在、ホームセンターや市営住宅が立ち並ぶが、遊園地としては手狭な感じ。「本当にこんな場所に?」という疑問が残る。

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長蛇の列ができたオープン当初=神戸市西区井吹台西町1(同市提供)

 ◆アラビア世界がテーマ

 東京の老舗遊園地「浅草花やしき」を経営していた、機械製造会社「トーゴ」社が手がけたという。だが同社は2004年に経営破たん。現在の運営会社に問い合わせても「当時の資料はない」と、にべもない返事だった。

 情報を求めてたどり着いたのは、市都市局。残っていた当時の報道向け資料の冒頭には、「新しい時代のアーバンミニテーマパーク」という、勇壮なキャッチフレーズが躍る。

 資料によると、「アラビアンナイト」というテーマは、「物語の持つ不思議さやエキゾチックな雰囲気」を演出することを目的に選ばれたようだ。約3ヘクタールのコンパクトな敷地に、メリーゴーラウンドなどの遊具が並んだ。

 王宮をイメージした門をくぐると、スカーフやショールを身につけた踊り子がきらびやかに舞い、ラクダにも乗れた。日本人がイメージする「アラビアンナイト」を具現化した施設だったようだ。

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園内ではラクダに乗ることもできた=神戸市西区井吹台西町1(同市提供)

 ◆なぜ短期間営業?

 気になるのは、開業前から営業期間を「1993年からの5年間」と明記している点。人気を集めたかもしれないのになぜ?

 疑問に答えてくれたのは、西神ニュータウン研究会の大海一雄会長(87)。実際に訪れたこともある大海会長によると、「開園は同ニュータウンのまち開きに合わせ、地域のにぎわいづくりが目的だった。そのため、当初から長く営業する予定はなかったようだ」という。

 予定通りアリバシティ神戸は97年11月末、わずか4年8カ月で閉園。しかし当時の神戸新聞によると、阪神・淡路大震災が起きた95年、3月には営業を再開。被災地で失われた娯楽を求め、1週間で4万人が入場した。最終営業日にはおよそ6千人もの人が訪れ、閉園を惜しんだという。

 閉園から22年後の今年、ディズニーのアニメ映画『アラジン』の実写リメーク版が日本でもヒット。もし今もあれば、相乗効果できっと盛り上がったはずだ。砂漠の蜃気楼のように、はかない運命をたどった遊園地。だが訪れた多くの人々の心には、今も楽しかった思い出として刻み込まれていることだろう。

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園内にあった乗り物=神戸市西区井吹台西町1(同市提供)