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M's KOBE

海と山に囲まれた港都・神戸。明治期の開港をきっかけに、映画やジャズ、ファッションなど西洋文化をいち早く取り入れ、モダンでハイカラな街として発展してきました。

神戸新聞では2018年7月から市内9区をひと月ずつ訪ね歩く「マンスリー特集」をスタート。これまで紙面掲載された記事を集めました。神戸らしさを象徴する「海(Marine)」「山(Mountain)」「音楽(Music)」「神戸牛(Meat)」「出会い(Meet)」、そして「マンスリー(Monthly)」の頭文字「M」をあしらった、その名も「M's KOBE」。

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“一流”支える「技術の殿堂」 アシックス・スポーツ工学研究所 2019/12/10

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走っている選手の動きを詳細に分析する「バイオメカニクス実験室」=アシックススポーツ工学研究所

 有森裕子さんや高橋尚子さんら陸上選手をはじめ、大谷翔平選手や内村航平選手など世界の一線で活躍する数多くのアスリートを

、靴をはじめとしたさまざまなスポーツ製品で支え続けているアシックス(神戸市中央区)。最先端の技術が凝縮された同社の製品を生み出しているのが、同市西区高塚台6にあるスポーツ工学研究所だ。普段はあまり公開されることがない所内で、取り組みを紹介してもらった。

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陸上のフィールドが周囲を走る研究棟=アシックススポーツ工学研究所(アシックス提供)

 正門を入ると、青色の「asics」の文字が際立つ建物が目に飛び込む。その周りを囲むかのように、陸上選手が使うトラックのフィールドが地面を走っている。聞くと、このフィールドは研究に欠かせない存在なのだそうだ。

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ラグビー製品開発のために設けられた人工芝実験場=アシックススポーツ工学研究所(アシックス提供)

 所内には、体育館やテニスコートのほか、ラグビー製品開発用の芝生を植え込んだ中庭もある。

 「さまざまなスポーツに対応できるよう、多くの設備を整えています」

 案内してくれたのは、同研究所技術戦略チームの石川泰葉さん。石川さんによると、各施設では、特殊なカメラや地面に設置した専用のセンサーでアスリートの動きを分析する。どこに負荷がかかっているかや、体を動かしたときの特徴を詳細にデータ化し、製品開発につなげているという。

     ◇

 実際に、陸上五輪メダリストの桐生祥秀選手と同様モデルのシューズを見せてもらった。持ってみて驚いたのは、その軽さだ。具体的な数字は「開発段階」として明かされなかったが、素人感覚では靴を履いているのを忘れるほどである。

 「裏を見てください。スパイクシューズなのにスパイクピンがないのです」

 陸上短距離選手から「ピンが地面に刺さる感覚がある」との声を聞き、約3年かけて開発したという。軽量化と合わせ、刺さって抜ける時間やエネルギーのロス削減をぎりぎりまで追求した製品だ。

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桐生祥秀選手と同様モデルのシューズ=アシックススポーツ工学研究所

 桐生選手は実際に研究所を訪れて「バイオメカニクス実験室」と呼ばれるゾーンで直線を試走。ここでは、あらゆる角度からカメラやセンサーで動きを捉え、特徴を分析した上で選手に合った製品開発の一助にする。研究所周囲のフィールドも「曲がるときにはどのような負荷がかかるか」などを測定するために設けられていたのだ。

 このほか、テニスのノバク・ジョコビッチ選手の実物シューズや、ラグビーの海外代表のウエアも見せてもらった。いずれも、アシックス独自の最先端の研究要素を取り入れながら、各選手やチームに合わせた開発がなされている。

 研究所を「技術の殿堂」と胸を張った創業者、鬼塚喜八郎氏の顔が目に浮かぶかのようである。(安福直剛)