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M's KOBE

海と山に囲まれた港都・神戸。明治期の開港をきっかけに、映画やジャズ、ファッションなど西洋文化をいち早く取り入れ、モダンでハイカラな街として発展してきました。

神戸新聞では2018年7月から市内9区をひと月ずつ訪ね歩く「マンスリー特集」をスタート。これまで紙面掲載された記事を集めました。神戸らしさを象徴する「海(Marine)」「山(Mountain)」「音楽(Music)」「神戸牛(Meat)」「出会い(Meet)」、そして「マンスリー(Monthly)」の頭文字「M」をあしらった、その名も「M's KOBE」。

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神戸唯一のしょうゆ蔵 “至極の素材”で伝統の味 2019/12/17

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 100年の時を経て受け継がれる酵母菌。敷地内に湧き出る清水-。“至極の素材”を使い、手間暇をかけて香り高いしょうゆを作り上げる老舗が神戸市西区にあると聞き、訪れた。(杉山雅崇)

 創業1885(明治18)年の池本醤油(同区櫨谷町福谷)。1914(大正3)年に蔵を現在の場所に移し、その後、法人化した。同様の小規模蔵が次々に廃業していく中、「明治」「大正」「昭和」「平成」「令和」と5つの時代を超えて地域住民に親しまれてきた、市内唯一のしょうゆ蔵だ。

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 大正時代に建てられた古民家社屋は、歴史の重みを感じさせる。玄関先にかかる屋号も黒ずみ、味わい深い。

 社員は計7人。それぞれが製造者であり、営業マンだ。製品のラベル貼りも近所の女性社員が一つ一つ手作業で行う。

 6代目としてブランドの「菊むらさき」を守り続けるのが池本充宏さん(57)。しょうゆ作りの“命”とも言える酵母菌は、初代から池本さんへと100年余り受け継がれてきた。原料の大豆は一部県内産を使い、深く、まったりとした味を引き出すのは、敷地内からこんこんと湧き出す清水だ。

 「先祖は水のいいところを選んでこの場所を選んだと聞いている。混ざり気のない、澄んだ水がおいしさの源」と池本さんは力を込める。

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 大規模メーカーでは請け負えない小規模店舗への出荷に注力する。しょうゆの納入はもちろん、個人経営者と協議を重ね、商品開発した焼き鳥のタレやうどんのだし汁なども提供しているという。

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 取材に訪れた時も、蔵では1年かけて醸造したしょうゆを専用の容器を使って瓶に入れ、出荷用の箱に詰めていた。

 数年前には、友人に協力してもらい公式サイトを開設。工場内にヒノキ造りの直売所を新設した。西区が主催する「魅力発見ツアー」の見学者も受け入れ、若年層や西区外の住民へのアピールに取り組んでいる。

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 池本さんは「しょうゆは和食の基礎で、日本人のDNAに刻み込まれた味。新商品の開発や時代に合った味の改良などで、その良さをもっと広めたい」と話す。