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M's KOBE

海と山に囲まれた港都・神戸。明治期の開港をきっかけに、映画やジャズ、ファッションなど西洋文化をいち早く取り入れ、モダンでハイカラな街として発展してきました。

神戸新聞では2018年7月から市内9区をひと月ずつ訪ね歩く「マンスリー特集」をスタート。これまで紙面掲載された記事を集めました。神戸らしさを象徴する「海(Marine)」「山(Mountain)」「音楽(Music)」「神戸牛(Meat)」「出会い(Meet)」、そして「マンスリー(Monthly)」の頭文字「M」をあしらった、その名も「M's KOBE」。

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神戸外大ならではの伝統 学生が全力で作り上げる外国語劇 2019/12/26

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 不思議な舞台だ。出演者の動きは機敏で、緊張しながらも全力で演じる学生の姿はすがすがしい。音響や照明もよく見る舞台と変わらない。何が不思議なのか? 飛び交うセリフがすべて外国語なのだ。今年で70回を迎えた神戸市外国語大学(神戸市西区学園東町9)の「語劇祭」。今月14、15日に神戸アートビレッジセンター(兵庫区新開地5)で行われた公演では、英語、中国語、イスパニア語、ロシア語の4言語が飛び交い、5種類の作品が披露された。同祭の富井葵衣実行委員長(21)に語劇祭について語ってもらった。(喜田美咲)

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■全て学生が担う

 第2次世界大戦後の混乱が残る1946年、神戸市外大の前身である「外事専門学校」(49年に同大に昇格)が創立された。語劇祭が始まったのは翌47年のこと。当時の1年生が諏訪山小学校(現・こうべ小学校、中央区)の講堂を舞台に第1回の公演を行ったとの記録が残る。大学紛争で中止を余儀なくされた69、70年を除き、脈々と引き継がれてきた。

 富井さんは「毎年100人以上の学生が携わる外大の名物」と胸を張る。自らも英米語劇団に所属し、音響を担当した。

 語劇祭は、富井さんが説明するように、学生主体の舞台ということが最大の特徴だ。演目の選定から、配役、演技、舞台演出、音響、照明、チケット販売まで全て学生が担う。

 中国、英米、第2部英米(夜間)、イスパニア、ロシアと5劇団あり、学生たちは、それぞれの専攻言語の劇団に所属する。演目は、4言語を母国語にする国出身者のものか、4言語で書かれた作品に限られ、各劇団約2時間の舞台を作り上げる。

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■生きた言語に向き合う

 「多いときには週6日、授業の空き時間や放課後に集まり、夏ごろから練習を重ねてきた」

 中国語劇団の演出を務めた村本幸乃さん(19)は力を込める。

 公演では舞台横のスクリーンに学生が訳した日本語字幕も映し出される。村本さんは「日本語訳(字幕)はワードで50枚ぐらいになったが、徐々に読解力が付いてきたのが実感できた」と笑顔を見せた。

 中国語劇団の公演は、文化大革命の時代を生き抜く女性の物語「生きてゆけ」。悲恋や格差の中でもがきながらも、自分の生きる道を探していく-という内容で、舞台ではせりふだけでなく、教授から受けた「中国人は、日本人より人と人との距離感が近い」とのアドバイスを動きに反映させる工夫も試みた。

 14、15両日の会場は、定員180人を超え、補助席を出すほど大盛況で幕を閉じた。

 今年は、最優秀劇団賞にイスパニア語劇団、優秀劇団賞に中国語劇団が輝いた。富井さんは「学生一人一人が全力で作り上げる舞台。演じる国の風土や文化を学ぶことができるばかりか、〝生きた言語〟に向き合える外大ならではの伝統」と話した。