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M's KOBE

海と山に囲まれた港都・神戸。明治期の開港をきっかけに、映画やジャズ、ファッションなど西洋文化をいち早く取り入れ、モダンでハイカラな街として発展してきました。

神戸新聞では2018年7月から市内9区をひと月ずつ訪ね歩く「マンスリー特集」をスタート。これまで紙面掲載された記事を集めました。神戸らしさを象徴する「海(Marine)」「山(Mountain)」「音楽(Music)」「神戸牛(Meat)」「出会い(Meet)」、そして「マンスリー(Monthly)」の頭文字「M」をあしらった、その名も「M's KOBE」。

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「心揺さぶられる体験できる」 すまうら文庫運営の林さん 2019/06/13

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 「本に囲まれると幸せで落ち着くの」。40年以上にわたり、JR須磨駅(神戸市須磨区)の住宅街で私設の「すまうら文庫」を開く林眞紀さん(78)。退屈しのぎで始めた文庫は、地域の子どもたちが集まる“居場所”へ発展。今では親子3世代で通う家族もいる。「私、そんなに読書家じゃないのよ」とほほ笑む林さんに、ご自身の物語を聞きました。(津田和納)

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 -1978年に文庫を始め、40年を迎えました。

 「自宅で営む油販売店の店番をしていたんだけど、暇でね。退屈しのぎに、書庫を作ったの。95年の阪神・淡路大震災で店が倒壊し、その後はアパートの一室で文庫を再出発させた。2008年、船をモチーフにした現在の建物に移り、今では7千冊以上の絵本、児童書をそろえています」

 -文庫を開く上で大切にしていることはありますか。

 「自分が、自信を持って選んだ本だけを置くこと。『おはなしの会』では、ローソク1本の明かりを囲んで読み聞かせます。本に囲まれ、温かで落ち着く空間を作りたいから。一番大事なのは、子どもが年齢的に難しい本を借りようとする時、絶対にダメと言いません。いろんなことに興味を持ち、世界を広げてもらいたいです」

 -本の魅力って何でしょう。

 「戦後、本のない時代に育ちました。大学生の時、図書館の書庫を整理するボランティアをしたら、本の匂いが落ち着いて、語り掛けてくるような親しみを感じたの。それ以来、本が大好き。質問を聞くと、高校の先生が『本を並べておけば、知識をいつでも自分のものにできる』とおっしゃったことを思い出すわね。本は、自分に力が必要な時、知恵を授けてくれます。物語の主人公に自分を置き換えて想像し、心を揺さぶられる体験ができるのも魅力の一つですね」

 -最も思い入れのある本は何ですか。

 「『花さき山』(斉藤隆介作、滝平二郎絵)です。30歳で出合って以来、何度も助けられた。『つらいことを辛抱すれば、その優しさとけなげさが山奥に花を咲かす』と登場するやまんばが言うの。しんどい時には、『今、花が咲いてるわ』って思うと気が楽になる。単純なストーリーに、人生の中で何度も励まされました。子どもたちにも、苦しい時に知恵や勇気を与えてくれる本に出合ってほしいですね」

■親子3代で通う読書ファン 人生の一冊は?

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 「すまうら文庫」に、親子3代で通う読書ファンに人生の一冊を聞きました。

谷川喜久代さん(80)

 「せいめいのれきし」(バージニア・リー・バートン文・絵、いしいももこ訳)

 「1日が巡り、季節が巡り、子どもが大人になって人の命が巡っていく。人生よりも壮大な宇宙が語られた本です。絵も美しい。私たちは日々進化して、命を紡いでいく…。そんな人生の真実を教えてくれます」

水谷有貴子さん(44)

 「ライオンと魔女」(C.S.ルイス作、瀬田貞二訳、ポーリン・ベインズ絵)

 「言わずと知れたファンタジーの傑作。別の世界に入っていく感覚が好きで、大人になってからも何度も読み返しています。舞台は第二次世界大戦中のイギリス。衣装だんすの向こうは魔法の世界で、思いがけない冒険や災難が降りかかります。主人公が子どもなので、物語に入り込みやすいです」

水谷環生さん(12)

 「ギルガメシュ王ものがたり」(ルドミラ・ゼーマン文・絵、松野正子訳)

 「主人公の冷酷な王様が、仲間をつくり、人間らしい温かな心を持っていくストーリーが好き。大きな絵本だから、絵の迫力もあるよ」