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M's KOBE

海と山に囲まれた港都・神戸。明治期の開港をきっかけに、映画やジャズ、ファッションなど西洋文化をいち早く取り入れ、モダンでハイカラな街として発展してきました。

神戸新聞では2018年7月から市内9区をひと月ずつ訪ね歩く「マンスリー特集」をスタート。これまで紙面掲載された記事を集めました。神戸らしさを象徴する「海(Marine)」「山(Mountain)」「音楽(Music)」「神戸牛(Meat)」「出会い(Meet)」、そして「マンスリー(Monthly)」の頭文字「M」をあしらった、その名も「M's KOBE」。

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多世代の交流目指す老人ホーム 神戸・須磨の「きらくえん」 2019/07/23

記事

 多世代が共に生きるまちづくりが、特別養護老人ホーム「KOBE須磨きらくえん」(神戸市須磨区車)で進んでいる。カフェやケーキ店が併設し、地域住民らに開放された多目的ホールには多くの人が集う。2020年には、保育所や障害者の就労支援所も増設する予定だ。少子高齢化が加速し、親との別居世帯が増える現在、理想の社会のイメージが膨らむ。一体、どんな場所だろう? きらくえんを訪ねた。(津田和納)

 施設の扉を開けると、鮮やかな生け花が目に飛び込んできた。「ボランティアの方が季節の花を持ってきてくれます」と施設長の坂本豊和さん。開放されたギャラリーでは、入居者と家族がお茶を飲みながらおしゃべりし、和やかな時間が流れる。

 同施設は2012年、社会福祉法人「きらくえん」が開設した。同法人は、障害者と健常者が分け隔てなく共に地域で暮らす「ノーマライゼーション」の理念に基づき、阪神・淡路大震災後にはケア付き仮設住宅を設けたり、全国に先駆けて全個室の特養を展開したりと、先進的な取り組みを続けている。

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 お昼時、入居者の食卓をのぞくと、プラスチックではなく陶器の皿が並ぶ。個室の出入り口には、立派な木製の表札が。「『施設の暮らし』ではなく、『普通の暮らし』を生み出すことが、個人の尊厳を保つと思っています」と坂本さん。

 ホールでは、楽器演奏や体操など、入居者向けに日替わりのプログラムが開かれ、地域住民にも開放される。コーラスグループの練習や育児サークルの活動場所としても使われているといい、坂本さんは「施設と聞くと近寄り難いため、一切の垣根を取っ払った。住民がつながる拠点として根付いてきている」と話す。

 職員の身体的負担を減らそうと、要介護者の体を持ち上げやすくする福祉用具も導入。「職員がいつまでも自信を持って働ける環境をつくることが、人生100年時代の働き方につながる」と先を見据える。

 現在、施設の近隣には診療所やケーキ店が並ぶ。幅広い世代が、多様な目的で施設を訪れる光景はもはや日常となっている。「この場所を核にして、年齢や障害、性別などの隔たりがない地域社会を実現していければ」と力を込める。