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M's KOBE

海と山に囲まれた港都・神戸。明治期の開港をきっかけに、映画やジャズ、ファッションなど西洋文化をいち早く取り入れ、モダンでハイカラな街として発展してきました。

神戸新聞では2018年7月から市内9区をひと月ずつ訪ね歩く「マンスリー特集」をスタート。これまで紙面掲載された記事を集めました。神戸らしさを象徴する「海(Marine)」「山(Mountain)」「音楽(Music)」「神戸牛(Meat)」「出会い(Meet)」、そして「マンスリー(Monthly)」の頭文字「M」をあしらった、その名も「M's KOBE」。

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安全守る機動隊の最前線に密着 新人記者も訓練体験 2019/07/25

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 「若き獅子たち」と呼ばれる兵庫県警警備部機動隊の拠点が神戸市須磨区妙法寺にある。災害時や人命救助の際に最前線で活躍する同隊員ら。「新人記者の登竜門といえば、警察の訓練体験記やで」とデスクから背中を押され、体力だけが取りえの私は同隊に体験を申し入れた。しかし…。(千葉翔大)

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 「隊員と同じ訓練をするとけがしますよ。まずもって無理ですね」と同隊の月輪敏郎副隊長(50)。男性200人以上が所属する同隊には、レンジャー隊や広域緊急援助隊などがあり、それぞれが日々専門性を高める訓練を行う。

 例えば潜水隊は酸素ボンベを使わず、水深5メートルまで潜り、重さ8キロのベルトを巻いて浮上するなど、実践さながらのトレーニングを繰り返す。話を聞くほど自信を無くす私に、月輪副隊長が「就業体験中の中学生と一緒なら体験できますよ」と声を掛けてくれた。

 6月5日午後1時、操練場で体験がスタートした。隊員が着用する紺色の作業着に着替えたが、生地は分厚く、風を通さない。この日の最高気温は28度。額の汗が止まらなかった。

 まず、谷あいを渡ることを想定した「セーラー渡り」に挑戦。手本を披露する隊員は、高さ3メートルに張られたロープをわずか数十秒でするすると渡り切った。

 「簡単そう」と安心したのもつかの間。実際にロープを握ると直径2センチ程度でその細さに驚く。足を掛けるとロープが激しく揺れ、バランスが取れない。「レンジャー千葉、行きます!」と腹から声を出すが、「もっと大きく!」と大声が飛んでくる。うつぶせで、ロープを手繰り寄せながら進み、約5分で対岸に到着した。ロープですれた股間はひりひりと痛い。

 続いて降下訓練。落下防止用のハーネスを身に着け、高さ約4メートルの鉄柱に上る。装備の重さや圧迫感にたじろいだ。地面に背中を向けながら、ゆっくりと下っていくが、上体が左右に揺れる。下で見守る中学生からは失笑が漏れていた。

 実際に、隊員が訓練する高さは13メートル程度。月輪副隊長は「きょう体験した訓練は、ほんの一部。気力、体力、精神力、全てを兼ね備えた隊員たちで機動隊を構成している」と話した。日々の過酷な訓練の上に、私たちの日常がある。

 恐怖心からロープを握る手に力が入っていたのだろう。その後、パソコンのキーボードを打つ指が、痛みで悲鳴を上げていた。

【機動隊】テロ行為への対処、台風や地震などの災害現場に出動するほか、イベントなどの雑踏警備も担う。各都道府県警察に常設され、兵庫県警警備部機動隊には巡査から警視までの男性約200人が所属。専門性のある6部隊に分かれ、遭難者を救助するレンジャー隊、海難救助などに向かう潜水隊のほか、爆発物処理隊▽銃器対策部隊▽広域緊急援助隊▽NBC(核・生物・化学)テロ対策班がある。