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M's KOBE

海と山に囲まれた港都・神戸。明治期の開港をきっかけに、映画やジャズ、ファッションなど西洋文化をいち早く取り入れ、モダンでハイカラな街として発展してきました。

神戸新聞では2018年7月から市内9区をひと月ずつ訪ね歩く「マンスリー特集」をスタート。これまで紙面掲載された記事を集めました。神戸らしさを象徴する「海(Marine)」「山(Mountain)」「音楽(Music)」「神戸牛(Meat)」「出会い(Meet)」、そして「マンスリー(Monthly)」の頭文字「M」をあしらった、その名も「M's KOBE」。

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昭和の風情と異国が混在の下町 神戸・塩屋の商店街を散策 2018/08/28

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 平成生まれの私には、昔のテレビ番組や雑誌でしか目にしたことがない「昭和」の風景。狭い路地に店舗がひしめき合い、レトロな雰囲気を醸し出す神戸市垂水区塩屋駅前の商店街は、まさに私が想像する「昭和の風情」を放っていた。かと思えば、迷路のような小径を進むと、今度はしゃれた洋館が姿を現す。角を曲がるごとに表情を変えるまち。異国が混在する下町。そんな塩屋の魅力を、地元に店を構えて20年になる八百屋「みにとまと」店主沢勝弘さん(74)と一緒に見つける散歩に出た。(末吉佳希)

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 沢さんとは、商店街の北端で待ち合わせた。最初は、沢さんの店の隣にあるピザ屋「ピザ アキラッチ」へ。店主の大川陽さん(35)は舞子で育ち、高校卒業後は塩屋漁港でノリの養殖などに携わった。「塩屋で店を開きたい」と、大阪・梅田のピザ屋で修業を積み、約2年前に開業した。

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 「ピザを身近に、もっと気軽に」をモットーに地元産の魚や野菜などを素材にする。「騒がしすぎず、ゆったりとした時間が流れる雰囲気が好き」と大川さんは塩屋の魅力を力説する。

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 5月には数十匹のこいのぼり、7月には七夕飾りが連なる塩屋谷川を横目に商店街を南下する。狭い路地の前に着いたところで、沢さんが「ここが商店街のメインストリートです」と一言。道幅は2メートルもない。両手を広げて歩けば軒先の看板にぶつかりそうだ。

 「雨の日にすれ違う時は、身長の高い方が傘を持ち上げて道を譲るのがルール」と沢さん。「嫌でも顔を合わせることになる距離だから、おのずと顔見知りが増えるんです」と続けた。

 商店街は緩い弧を描くようになっており、曲がり角や脇道が連なるため、気を抜くと方向感覚を失いそうになる。迷路のようだ。

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 次は「食堂 しろちゃん」へ。約40年続く老舗で、学食のような価格設定が定評だ。定番メニューは唐揚げ定食。「塩屋の住人はこの店の唐揚げの味で育った」と沢さんが力を込める。味付けは店主の松岡泰司さん(58)の父が、元町の中華の達人から教わった秘伝のレシピがあるという。

 平日は仕事帰りのサラリーマンや職人たちが連日店に足を運ぶそうで、松岡さんは「『ただいま』と言って店に寄ってくれる常連さんの声に日々の喜びを感じる」と目を細めた。

 続いて訪れたのはカフェ&ソバ教室「Sobar(ソバール)」。山と海が近い塩屋にひかれた夫婦が昨年開業した。店主の西尾友紀さんは「小さな街だから、顔なじみもあっという間に増えるし、何より結束が固い」と語る。

 時折シャッターで閉ざされた店が目に留まる。高齢や後継者の不在で店を閉じたという。一方で、ソバールやピザ アキラッチなど、移住してきた若手の活躍に助けられているという。沢さんは「住民に愛されることも大事だけど、市区外の人に塩屋の魅力を知ってもらうえたらもっとうれしいかな」と笑った。