猟奇王は伊丹のまちを走るのか

　伊丹が産んだ世紀のマイナーまんが家・川崎ゆきお。その初めての原画展が、伊丹市内のカフェで開催されます。
　彼の代表作は、１９７０年代に雑誌「ガロ」に連載されて話題となった「猟奇王」シリーズ。お世辞にも上手いとは言えない独特のタッチで描かれた不思議な世界観は、今も熱狂的なファンの心を捉えて離しません。
　その主人公である猟奇王は、いつも黒いマスクをかけて原っぱにある廃ビルに潜み、ひそかに世紀の大犯罪を画策しています。そうです、昭和初期に現れた怪人二十面相のごとき、ロマンあふれる劇場型犯罪を夢見る男、それが猟奇王なのです。
　今回の原画展では、当時「ガロ」に掲載された「猟奇王」シリーズの貴重な原画８点をはじめ、関連資料がカフェの壁面いっぱいに並べられ、時代錯誤的な夢とロマンにあふれた川崎ゆきおワールドが展開されます。
　突然の新型コロナウイルス感染症のおかげで、先を見通すことが困難な今。多くのものに縛られ身動きがとれない現実社会を忘れ、猟奇王が夢見る見果てぬ夢を分かちあうには、絶好のタイミングではないでしょうか。
　「こんな時に猟奇王は出てくんねん」という川崎ゆきおの言葉を胸に刻みながら、噛めば噛むほど味が出る川崎ゆきおワールドを堪能したい。