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初めての東京 気ままにひとり歩き【1】

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更新日:2018年01月15日

 2017年5月から、単身赴任先の東京で初めて暮らすことになった。東京といえば、空をさえぎる高層ビル群、満員電車や大渋滞といったマイナスイメージばかり。実際、20年の東京五輪・パラリンピックを前に、地下鉄やビルの建設ラッシュによる混雑は想像を超えていた。だが、気の向くままに街を歩いてみると、江戸から続く歴史や文化の厚み、奥深さを実感する。そんなひとり歩きで発見した等身大の街の魅力を紹介したい。まずは不思議な縁で移り住んだ界隈から。

ある坂道を探して(台東区谷中~文京区根津)


破綻した東京渡辺銀行の屋敷跡に残る「あかじ坂」。黒々とした大きな石垣は当時のままという=東京都台東区谷中2

破綻した東京渡辺銀行の屋敷跡に残る「あかじ坂」。黒々とした大きな石垣は当時のままという=東京都台東区谷中2

 神戸も坂の街だが、東京も坂道だらけだ。しかも名前が面白い。団子坂、もみじ坂、S坂、いも坂…。私が住む周辺だけでも、ユニークなネーミングの坂があちこちに。ここに転居したのも、ある坂道がきっかけだった。
 「あかじ坂」。おととしの暮れ、この坂を探して台東区谷中~根津周辺を歩いた。神戸発祥で大正期に日本最大となった巨大商社・鈴木商店の軌跡をたどる連載「遙かな海路」の取材だった。鈴木商店は大正の米騒動で焼き打ちに遭い、その後の昭和恐慌で破綻したが、流れをくむ神戸製鋼所や双日、帝人などが今も健在だ。
 1927(昭和2)年の鈴木破綻の引き金となった昭和金融恐慌では、東京渡辺銀行が蔵相の国会での失言で取り付け騒ぎに逢い、最初に破綻した。そのルーツは、江戸時代に兵庫・明石出身の「明石屋治右衛門」(あかしやじえもん)が日本橋に開いた海産物問屋。「あかじ坂」は創業者の名に由来していた。鈴木破綻と兵庫ゆかりの銀行破綻がつながっていることを知り、どうしても坂を見たかった。
 探し回ってようやくたどり着いた坂は、台東区谷中2丁目の創業家の広大な屋敷跡にあった。黒々とした大きな石を積んだ石垣が往時をしのばせる。近所の高齢女性に聞くと、「破綻した銀行の親族が住んでいたから、『赤字の坂』という意味と聞かされていた」という。


江戸6代将軍ゆかりの神社へ


徳川6代将軍ゆかりの根津神社。森鴎外や夏目漱石も散歩の途中、立ち寄った=東京都文京区根津1

徳川6代将軍ゆかりの根津神社。森鴎外や夏目漱石も散歩の途中、立ち寄った=東京都文京区根津1

 「あかじ坂」を下り、交差する不忍通りを渡って狭い通りを進むと、徳川6代将軍家宣(いえのぶ)ゆかりの神社、根津神社(文京区根津1丁目)に行き当たる。社殿は荘厳な権現造りで、国の重要文化財。境内には家宣の胎盤を埋めたとされる胞衣(えな)塚が残る。森鴎外や夏目漱石が散歩の途中で休憩したという「文豪の石」や鴎外が寄贈した「鴎外の石」も。人の背丈ほどの赤い鳥居が連なるトンネルも見ものだ。
 門前には、間口一間ほどの小さなあめの専門店。約100年前の創業で、現在は4代目が引き継ぎ、懐かしい金太郎飴(あめ)やきなこ飴などを製造、販売している。あんず入り飴は総理大臣賞を受賞した自慢の逸品。根津神社の最寄り駅、地下鉄千代田線根津駅の近くには、文化庁の登録有形文化財に指定された明治時代の木造3階建ての建物が立つ。今は串揚げの有名店「はん亭」となり、落ち着いた雰囲気の店内で、季節の食材を使ったアツアツの串揚げが味わえる。


路地に下町風情漂う


参道にある金太郎飴の専門店は郷愁を誘う=東京都文京区根津

参道にある金太郎飴の専門店は郷愁を誘う=東京都文京区根津

 台東区谷中から文京区根津、千駄木界隈は、作家の森まゆみさんが名付け親とされる「谷根千」(やねせん)の呼び名で知られ、休日ともなれば多くの観光客が押し寄せる。大通りを一本入れば細い路地が縦横に伸び、下町風情がたっぷり。根津と千駄木の間の通称「へび道」もそんな路地のひとつだ。旧藍染川を埋め立てた通りは、その名のとおりくねくねと曲がり、古い民家を活用したしゃれたカフェや亀の子だわしの専門店なども点在する。
 途中、自治会の掲示板にチラシを張っている住民に出会った。町内の子育てイベントのお知らせで、下町らしい住民同士のつながりも垣間見えた気がした。
 次回は、明治期に作家の森鴎外や夏目漱石らが住んだ文豪の街・文京区千駄木を歩く。(村上早百合)
     ◇
 30年余り記者を続け、経済部長、論説副委員長などを経て、2017年5月から東京支社長。家族は夫と社会人の娘。20数年ぶりの1人暮らしで仕事と子育てに追われたのがうそのように時間に余裕ができ、健康維持を兼ねて街歩きを開始。趣味は読書、クラシック音楽、狂言の鑑賞など。この連載は毎月1、15日ごろにアップします。


【地図】今回歩いたのは…


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