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輸出金額日本一 兵庫は有数の「麺王国」だ

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更新日:2018年12月09日

  • チャンポンめんの味は「オール・イン・ワン・ラーメン」(中央)の名で海外へ=イトメン

  • 強火で焼き上げるケンミンの焼きビーフン。料理人が本格的な中華料理に仕上げる=神戸市中央区海岸通5、健民ダイニング

  • 機械から押し出され、冷却装置へ入っていく生パスタ=淡路市生穂新島、淡路麺業

  • 麺の湯切りをする、ずんどう屋総本店の厨房スタッフ。背中には「姫路から世界へ」=姫路市船丘町

  • 濃厚な豚骨スープが麺と絡まる味玉らーめん=ずんどう屋

 麺類をこよなく愛する同僚が物知り顔で声を上げる。「出石そばに、ぼっかけうどん、ミナト神戸の各国料理…。兵庫は有数の麺どころ。最近は海外にもつながっとるんや」。なるほど手延べそうめんなど特産がある。うまいパスタを出す店も多い。「兵庫と麺」。そんな切り口で調べてみた。(内田尚典、三島大一郎、井沢泰斗)
 
 まずは国の統計から。「うどん県」を掲げた香川県が注目されたが、輸出入の分類は「うどん、そうめん、そば」でひとくくり。海外の和食人気を追い風に昨年の輸出は数量、金額とも過去最高になった。
 神戸港でも金額が過去最高を更新し、国内ナンバーワンに。急速に伸びる大阪港とせめぎ合う。欧州などで需要獲得に力を入れる西播磨の手延べそうめん「揖保乃糸」に期待しよう。
 続いて「スパゲティ」。神戸港の輸入は数量、金額とも東京、横浜港に次いで多い。開港150年の節目を迎えた神戸港。異国情緒とともに根付いた洋食文化が輸入を支える。
 日本など11カ国は、自由貿易の枠組み「環太平洋連携協定」(TPP)の早期発効を目指す。スパゲティは関税の引き下げ対象で、国内で安く食べられる恩恵がありそうだ。反対に、製麺業者は海外品との競争がより厳しくなる。逆境を逆手に輸出に打って出る動きに注目したい。
 10月に始まったNHK連続テレビ小説は「即席麺」の開発を支えた女性がモデルだ。1958年に日本で生まれ、世界に広がる食文化。その輸出でも神戸港がトップを競う。
 たつの市の食品メーカー「イトメン」は播磨地域で抜群の知名度を誇る即席麺を販売。フランス領ポリネシアのタヒチ島でもなぜか根強い需要があるという。
 港町・神戸の国際性に加え、良質な水など自然環境にも恵まれた兵庫。現場を歩けば、多彩な「麺文化」とともに、時代の流れを読みながら切磋琢磨(せっさたくま)する企業の姿が浮かぶ。
     ◇     ◇
■イトメン/黄色い袋 内外の島で人気
 あっさりしてるのに塩味の利いたスープ。エビとシイタケのかやくが付き、独特の風味がやみつきになる。黄色い袋がトレードマークの即席麺。“播州人のソウルフード”といえばそう、イトメン(たつの市)の「チャンポンめん」だ。
 ただし長崎のご当地グルメ「ちゃんぽん」とは無縁。九州の購入者から「おいしいけど、ちゃんぽんじゃない」とたまに横やりが入るが、広報担当の伊藤しげりさん(45)は「いろんな具材を入れて食べてほしいという意味での『チャンポン』です」と涼しい顔だ。
 1963年に発売した。世間は空前の即席麺ブーム。飽きの来ない味とかやく付きが評判となり、たちまちヒット商品に。年間2千万食を売り上げる。
 播磨だけでなく、なぜか北陸で人気がある。「北陸の人には全国区の会社だと思われている」と伊藤さん。「魚も野菜もおいしい地域。麺と『チャンポン』した際、素材の味を引き立てるスープが舌に合うようだ」と分析する。
 海外にも販路を持ち、約9500キロ離れた南国の島・タヒチの袋麺シェアは驚きの6割とされる。約50年前、神戸の貿易会社がタヒチに住む中国人向けに輸出したのが始まりという。売れる理由を聞くと、伊藤さんの口から意外な言葉が飛び出した。「うちは島で強い」
 実は鹿児島の奄美大島や伊勢志摩の離島でも根強い人気がある。発売当初から愛され、「阪神間より奄美の人のほうがイトメンを知っている」と明かす。
 お薦めのレシピを尋ねると、返ってきたのはチャンポンめん1袋で作る「塩焼きそばとスープ(ぞうすい付き)」。手際よく調理する伊藤さんが途中で一言。「普通に食べるのが一番だけどね」。フライパンで炒められる麺を複雑な心境で見つめながら完成を待った。
 イトメンTEL0791・63・1361

■ずんどう屋/播州気質の国際派とんこつ
 濃厚な豚骨スープにコシのある細麺、傍らのどんぶりに山盛りの特製高菜-。これが播州・姫路の発祥、米国にも店を構える「ラー麺ずんどう屋」だ。
 「ZUND」(本部・姫路市)の橋本龍八(たつや)社長が23歳で創業したのは、サッカー日韓W杯を控えた2002年4月。脱サラし、古里で第一歩を踏み出した。その後、十数年で国内外に39店を展開。快進撃の秘密を探ろうと、姫路城に近い総本店(同市船丘町)へ足を運んだ。
 「あの時は社員一丸で大阪へ乗り込む気分でした」。広報担当の北村欣一朗さん(38)が手にしたのは大阪・心斎橋に6店目を出した11年のポスターだ。馬にまたがり大阪城へと向かう武将の頭に大きな寸胴(ずんどう)が覆いかぶさる。
 時代を駆けた戦国武将のごとく、兵庫から大阪、東京へと激戦区に攻め入った。15年には米ニューヨークに進出。「世界一の都市から打って出る、という覚悟を示したんです」と北村さん。「めざすのは、宇宙でいちばん」「目標は地球に1000店舗」。挑発的な文言がホームページに並ぶ。
 “播州人気質”の勢いのまま、のれんを押し上げてきた-。勝手な仮説をぶつけると、緻密な戦略の一端を明かしてくれた。海外初出店のニューヨークでは冷製ラーメンや辛味ダレを混ぜるスタイルを導入し、試行錯誤を図る。国内でも新しい食材や製法を取り入れ、味の改良を怠らない。
 総本店の稲葉廣樹店長(30)が1番人気の「味玉らーめん」を手に現れた。化学調味料を使わず、水と豚骨をほぼ1日炊き上げて作るスープ。手間をかける工程は創業以来変わらない。熱々を一気に食べきった。
 目についたのはユニホームにある「FROM HIMEJI」の文字。世界を目指しつつ軸足は発祥の地に-。派手さと伝統の両方を重んじる、そんな播州人をここに見た。総本店TEL079・298・4867

■ケンミン食品/米粉麺、ブーム乗り米国へ
 身近にあるのに、それほど詳しくはないビーフン。国内市場で7割のシェアを誇るのがケンミン食品(神戸市中央区)だ。原料の米粉にこだわった乾麺をタイで製造し、日本国内だけでなく、米国への出荷も手掛ける。
 ビーフンは中国南部の発祥とされる。ベトナムなどで親しまれる平打ちの米粉麺「フォー」と似るが、種類は異なる。同社は終戦後の1950年に創業し、古里の味を懐かしむ中国人や東南アジアからの引き揚げ者を中心に人気が拡大。即席焼きビーフンや冷凍ビーフンなども扱う。
 タイ工場の設立は87年。「原料のインディカ米が約200品種栽培されていることが立地の決め手だった」と取締役マーケティング部長の細井敦史さん(55)。ビーフンの品質は適度な硬さや調理中の切れにくさが鍵で、理想の食感はうどんやラーメンのコシとはやや異なるという。
 米国への出荷は2011年から本格化。小麦粉に含まれるグルテンを食べられないセリアック病の人が対象だった。12年にはタイ工場が米民間団体の「グルテンフリー」認証を取得。米国のスーパーに専用の売り場が設けられるなど市場として確立しているという。
 香ばしい匂いが漂ってきた。同部開発課係長の吉田聖士(さとし)さん(35)が豚肉やキャベツを合わせた特製焼きビーフンを手早く調理してくれた。「家庭で仕込みに時間をかけずに済むよう工夫した」と吉田さん。弾力があり、歯ごたえも十分だ。
 テレビ番組で取り上げられるなどし、麺料理の一つとして定着。同社の18年2月期は売上高、経常利益とも過去最高となった。
 ラーメンやうどんに追い付くため、吉田さんらが新メニューを試行錯誤している。細井さんは「年2回の新商品投入前はずっと試食の日もある。神戸から国内外へ、ヒット商品を出し続けたい」と熱意をみせた。ケンミン食品TEL078・366・3000

■淡路麺業/うどん店ルーツの生パスタ
 ゆでたパスタをソースに浸す。熱を加えながら一度だけ麺の上下を入れ替えるが、30秒間かき混ぜず麺にソースを吸わせる。フライパンを振り、ソースが絡めば出来上がり。「これでシェフと同じ味が出せます」。淡路麺業(淡路市)の社長出雲文人(ふみひと)さん(41)が熱っぽく語ってくれた。
 スパゲティ、モッチリーニなど約40種の生パスタを手掛ける。モチモチなのにコシがある。評判は口コミで広がり、全国約2千の飲食店から注文が入る。
 元は1909年創業のうどん店だ。製麺業を始め販売先を広げていったが、明石海峡大橋開通などで大手の商品が島内市場に流入。瞬く間に赤字に転落した。
 5代目として看板を受け継いだ出雲さんが目を付けたのが生パスタだった。競合相手が少なく、培ってきた技術も応用できる。教本を読みあさり、名店を食べ歩いた。約500種類の試作を重ね10年前、地元ホテルの料理長が「さすが麺屋さんやな」とうなるほどのパスタを作り上げた。
 営業ではかばんにフライパンを忍ばせ、商品を紹介しながら調理法も見てもらう。「麺を売るだけではだめ。おいしい料理を提供してもらい、その店に繁盛してほしい」と出雲さん。2015年には淡路市に直営レストランを開業。プロ向けの講習会も開き、特有の調理法を伝授している。
 原料の「デュラム小麦」は主に外国産を使うが、数年前から島内でも栽培する。「まだ少し癖がある。でも温暖な瀬戸内は日本の地中海。淡路島は兵庫のナポリだ。改良を進め世界に誇れるパスタを作りたい」
 経営指針に「23年に売上100億円」を掲げ、社長所信の結びにこう記す。「世界中の人に本当に美味(おい)しい生パスタを提供します」
 淡路島の生パスタが世界を席巻する-。そんな日が近い将来、訪れるかもしれない。淡路麺業TEL0799・64・0811
     ◇     ◇
【ここだけの味、あちこちにある】ミーツ・リージョナル元編集長、江弘毅さん 
 「兵庫と麺」といわれて、すぐ頭に思い浮かんだのは加古川にあるうどん店「丸万本店」。麺もだしもごっついうまい。明石の老舗「江洋軒(こうようけん)」も好き。中華そばと焼きそばが有名で、麺好きは両方を一度に頼む。どれもここでしか食べられない味。そんな店が兵庫にはポツポツある。
 麺どころといえばやっぱり播磨でしょ。「揖保乃糸」などそうめんの存在感が強い。酒蔵が多いことからも分かるけど、水がいいし、良質な小麦や塩もできる。しょうゆの名産地もある。麺どころとしての条件がそろっている。
 普段はあまり即席めんを食べないけど、「イトメン」のチャンポンめんはうまいよね。流通の問題なのか、大阪より金沢で売れているという話も面白い。それから姫路のまねき食品の名物「えきそば」。中華めんに和風だしという独特の組み合わせは、播磨ならではの発想だと思う。
 神戸や大阪を含む摂津は古くから麺食が盛んだった。うどんの文化やね。神戸には開港後、中華めんやパスタが入ってきた。製麺技術も高かったのだろう。いろんな麺料理が食べられるようになった。
 いま兵庫の麺料理がこれほど多彩なのは、食材にも恵まれているからだ。海の幸も山の幸も豊富。素材を変えれば工夫ができる。
 神戸の中華店などでメニューを見ると、同じ麺なのに料理の種類がめちゃくちゃあるでしょう。神戸ならではやなあ。そう思う。(談)

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