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<見聞録>和田淳展「私の沼」 奇妙な余韻残す世界

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更新日:2018年11月16日

 彼は「線」の画家である。独特の「間合い」「テンポ」による不思議な「動き」の表現者でもある。手描きの短編アニメーションで、シュールかつユーモラスな世界を築く神戸在住のアニメ作家、和田淳(あつし)(38)のことだ。ベルリン国際映画祭短編部門で、グランプリに次ぐ銀熊賞に輝いた経歴を持つ異才である。
 兵庫県立美術館(神戸市)で開催中の個展「私の沼」では、「私の息子」「私の猫柳」など五つの物語の断片を示す。水底が未来につながっていると信じられている通称「未来沼」が主な舞台。沼のほとりで妙に人間っぽい猫がネコヤナギと戯れ、5人の奇妙な小人たちが魚を釣り上げる…。
 5話に共通するのは語り手。女装姿の中年男が、沼にまつわる噂(うわさ)や自らの思い出話を静かな声で語り続ける。大切なものを投げ込んだときの水音で、未来が占えるのだという。
 三方の壁に映像を投影するインスタレーション(空間芸術)形式(計約17分)。中央がメインで、左右に線描のみの素朴なアニメが流れる。各画面は緩やかにつながり、時に呼応、連動する。繊細な線描によるいわゆる「ゆるーい」ヘタウマ風の絵柄と淡い色彩。全体として意味不明な物語で、くすぐったいようなおかしみに満ちた世界なのだが、細部が妙に心にひっかかる。
 例えば、愛らしく動物的ともいえる赤ん坊の動きや無邪気な笑い声。赤子は「未来」そのもので希望に満ちた存在のはずだが、取り巻く世界には、どこか不気味な肌触りがある。
 最も不可解なのは、異次元から来たような、のっぺらぼうの謎の生命体。しかし、説明は一切ない。ただ赤ん坊の分身らしく、両者の動きは連動する。
 物語を断ち切るような大きな「水音」にも意表を突かれる。未来も、そのように不意に途切れてしまうのでは、と不安を覚え、人生も社会も不確かで先は見えない、と気付かされるのだ。
 一方で、作品は果てしなくループしている風でもある。淡々とした無限の反復と繰り返し。「死と再生」によって、この世は続いていくことを示すかのように。穏やかなようでいて、この青い「沼」は深く底が知れない。そして、奇妙な余韻を残す和田ワールドもまた、一度足を踏み入れると、なかなか抜け出せない「沼」なのかもしれない。(堀井正純)
   ◇
 個展「私の沼」は12月2日まで。月曜休館。無料。兵庫県立美術館TEL078・262・0901

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