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個性的な女性像に生の喜びと哀愁描く 京都でキスリング回顧展

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更新日:2020年10月01日

  • 「肖像画」(1946年 個人蔵)協力 エドゥアール・マラング画廊 Courtesy Edouard Malingue Gallery

  • キスリング「ベル=ガズー(コレット・ド・ジュヴネル)」(1933年 カンティーニ美術館、マルセイユ)(C)Musée Cantini,Marseille

  • 青のバックに黄色の花が映える「ミモザの花束」(1946年 パリ市立近代美術館)Photographie(C)Musée d’Art Moderne/Roger Viollet

  • 色鮮やかな肖像画や花卉画が並ぶ会場=美術館「えき」KYOTO

 1920年代、芸術の都・パリで活躍した、ポーランド出身の画家モイーズ・キスリング(1891~1953年)。「モンパルナスの貴公子」とも呼ばれ愛された画家の回顧展が、京都市の美術館「えき」KYOTOで開かれている。個性的な女性像や色彩豊かな花の絵、静物画の数々は、生の喜びと哀愁・虚無感という、相反する特質を同時にたたえ、見る者を引きつける。(堀井正純)
 20世紀前半のパリには、イタリア人のモディリアーニ、ロシア(現ベラルーシ)生まれのシャガール、ブルガリア出身のパスキンら、多くの異邦人画家たちが集い、切磋琢磨した。藤田嗣治もその一人で、キスリングは、「エコール・ド・パリ(パリ派)」と呼ばれる彼らの中心的存在だった。19年にパリで初個展を開き成功。陽気でおおらかな性格で面倒見がよく、芸術家仲間から慕われた。奇人、お調子者を演じた藤田とともに、社交界のスターでもあった。
 画風の特徴は、前衛と古典の巧みなミックスだろう。パリ移住後、キュービスム(立体主義)で知られるピカソやブラックらと交流。初期作の画面構成には、セザンヌやキュービスムからの影響が見てとれる。鮮烈な色彩美はフォービスム(野獣派)などから学んだ。一方でルーブル美術館に通い、イタリアやフランドルの古典も研究。極端な前衛表現へは走らず、写実をベースに、描く対象のフォルムを単純化・デフォルメし、豊麗な色彩を駆使して、独自の絵画世界を追求した。
 本展は国内外の美術館や個人から集めた、初期から晩年までの油絵を中心に約90点を展示する。
 とりわけ魅力に満ちているのが、タータンチェックのドレス姿の女性を描いた油彩「ベル=ガズー(コレット・ド・ジュヴネル)」をはじめとする肖像画の数々だ。大半が女性像で、シンプルな背景に人物の存在感が際立つ。そして、アーモンド型の大きな目が印象深い。「マルセル・シャンタルの肖像」のように、強い意志の輝きを放つ目もあるが、多くの肖像画の瞳はどこかうつろで寂しげだ。遠くを見つめているのか、あるいは自らの内面に深く沈潜しているのか。近代の女性たちが抱えた憂いや孤独…。それは現代のわれわれこそが、より深く共感できるものではないか。
 瓶いっぱいに花々を盛った花卉図の数々も、華やかさの一方で、散りゆくもののはかなさ、無常さを秘める。キスリングは「生の喜び」を描いた画家とされるが、本展を監修した美術史家・村上哲氏は彼の絵の特徴として、「華麗さと陰鬱さが背中合わせの二面性」「存在と虚無が常に同居する両義性」を挙げる。女性や花の絵にももちろん、それは明らかだ。
 背景には、パリに生きる異邦人たちが共通して抱いた不安や悲しみもあっただろう。100年前のフランスには外国人芸術家らを嫌悪・排斥する人々がおり、加えて、ユダヤ系のキスリングはユダヤ人差別を肌で感じてもいた。反ナチスを掲げた彼はドイツから死刑を宣告され、40年にはアメリカへ亡命、戦後再びフランスへ戻っている。
 会場には、藤田との交友や、「モンパルナスの女王」と称されたモデル、キキとの逸話も解説されている。美術ファンには、19世紀フランスの新古典主義の画家アングルや素朴派の画家ルソーとキスリングの関係も興味深いに違いない。
 25日まで。会期中無休。千円ほか。同館TEL075・352・1111(ジェイアール京都伊勢丹代表)

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