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障害がある優れた美術作家を紹介 今年で10回目迎える「こころのアート展」 神戸に常設ギャラリー |
更新日:2021年06月17日
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常設のギャラリーで、色鮮やかな木下晃希さん(第7回選出)の作品に見入る宮崎みよしさん=神戸市北区、しあわせの村
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祷梨沙さん(第3回選出)が鳥を描いた作品。しっかり観察して、細部まで丁寧に描写する
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道脇歳雄さん(第3、9回選出)が使用済みペットボトルから作った「こぐま」や「ワニ」たち。3月に神戸・旧居留地での展示が企画された=神戸市中央区、神戸らんぷミュージアム
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前田諒太郎さん(第4回選出)が描いた「そら」。12色の色鉛筆で光や雲を丁寧に塗っていく
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藤井健太さん(第4、9回選出)が描いた「しぶや」。大胆な省略された構図と色使いが魅力だ
「わたしが大好き」なものにまっすぐだ。じーっと見入って、心の奥底から感じて、夢中で描く。楽しんで作る。そして、唯一無二の美と驚きを生み出す。兵庫県内の障害がある優れた美術作家を紹介する「こころのアート展」(神戸新聞社など後援)は、今年で10回目を迎える。神戸市北区のしあわせの村では1月から常設のギャラリーを設け、過去に入選した作家らの絵画や書、造形作品を飾る。多彩な「わたしらしさ」がきらめく。(小林伸哉)
こころのアート展は、作品ではなく、優れた作り手を選ぶ。ユニークな選考方式は、豊かな可能性を大きく育て、個性を存分に伝えるためだ。毎回、出展作者10人を選んで、それぞれの作品10点程度をまとめて飾ることによって、その世界観を丸ごと見せる。
2011年度にスタート。これまで979人が応募して、選ばれた出展作者は延べ97人に増えた。しあわせの村の展示会場には約5万2000人が来場した。
作家が熱中するモチーフは、動物や花々、鉄道、山々、工事現場、消火器とさまざまだ。作風は大胆だったり、繊細だったり。独自の意味を込め、新たに発想した文字の書もある。
「ばあちゃん、何作ってほしい」と問いかけ、立体を作る少女がいる。体が自由に動かせず、頭や足で筆を走らせる作家もいる。家族や仲間とのかけがえのない時間が絵になる。
「物事を一生懸命、そのまま見てるよ。そう、人間として『感じる力』が一番大事。思ったまま、見たままを描いてるよ」。そう絶賛するのは、初回から選考委員を務める美術家の宮崎みよしさん(75)だ。
審査では、JR神戸線の高架下を描いた男性作家の絵画が印象に残ったという。日ごろ見ていた景色が一変して見えた。「こんなきれいな場所やったんや。すごいよ。彼が発見させてくれた」と感謝する。
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ついに今年1月、しあわせの村の本館・宿泊館2階に、常設の「こころのアートギャラリー」(約300平方メートル)が誕生した。
藤井健太さんと木下晃希さんの展覧会「ビタミン」を7月19日まで開催中だ。鮮烈な色合いと大胆な構図の絵画約20点が並び、その名の通り、見る者を元気にしてくれる。午前10時~午後4時。入場無料。無休。
歴代の出展作者の作品は「こころのアート展」のホームページで掲載中。ギャラリーでも次々と作家を紹介していく。きっと大好きな作品が見つかるはずだ。
見ると、元気がわいて、すっとした気分になるのは、なぜだろう-。初回から選考委員を務める甲南大文学部の服部正教授(54)=美術史・芸術学=は「一人一人の作家が自分のスタイルをしっかり持って、洗練させている。それぞれの世界観は違って、別々の宇宙がある」と解説。「『絵を描くってすごく自由。自分がこれだと思うことを貫き通していいんだ』というメッセージが伝わる。見た人が『自由に自分らしく』と生き方を見つめ直すことになる」と語ってくれた。
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「第10回こころのアート展」の主催者は、出展作者を募集している。コロナ禍で2020年度は公募ができなかったため、2年ぶりとなる。
対象は、兵庫県内に在住、在学、在勤、または通所する障害者。表現のジャンルは絵画や書、写真、陶芸、彫塑、織物など自由で、展示可能なもの。応募の締め切りは7月15日(郵送なら必着)。選出者の作品はしあわせの村で12月16日~来年1月16日に展示する。ワークショップやその後の巡回展などを予定する。
詳細は「こころのアート展」のホームページで。主催は「こうべ市民福祉振興協会」福祉推進課TEL078・743・8092