三田

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おどける福田治さんに、自然と子どもの表情が笑顔に=福田商会
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おどける福田治さんに、自然と子どもの表情が笑顔に=福田商会
20日に閉店した写真館=福田商会
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20日に閉店した写真館=福田商会

 兵庫県三田市内で最も古い写真館「福田商会」(相生町)が20日に閉店した。結婚、修学旅行、家族写真…。1929年(昭和4年)に開業し、人々の人生の節目をファインダー越しに見つめてきた。近年はデジタルカメラやスマートフォンの台頭で、いつでも誰でも手軽に撮影できるようになった。「時代やなあ」と2代目の福田治さん(77)。その人にしか出せない表情を引き出すプロの仕事をやり切り、90年の歴史に幕を下ろした。(山脇未菜美)

 「ベロベロバア」「はい、おへそ」。

 今月12日、閑散とした2階のスタジオで、最後の撮影があった。被写体は、幼い頃から訪れてきた女性(32)=同市=の一家。閉店を前に長女(4カ月)の誕生祝いで家族撮影に訪れた。

 へそを示すなど身ぶり手ぶりでおどける福田さんに、この日も家族から笑みがこぼれた。「結婚式で緊張したとか、息子が泣き虫だったとか、写真はそのときの気持ちを思い出させてくれる」と女性が話す。

   ◇  ◇

 芸術家肌だった福田さんの叔父・勲さんが創業。福田さんは26歳のとき、手伝いを求められて働き始めた。店には戦争中に国民服姿で収まる人々の写真がたくさんあり、「当時、フィルムは配給やった」と勲さんが話したのを覚えている。

 約10年間は「暗室」と呼ばれる現像部屋にこもる毎日。カメラの精度が低く、モノクロで髪やひげが白くならないよう、鉛筆でネガをこすって黒さを際立たせた。30代で初めて出張撮影を任されたが、シャッターを切っても撮れたか不安で「足が震えた」と笑う。

 三田を訪れた常陸宮ご夫妻の記念撮影など多数の撮影を担った。86年に富士フイルムの「写ルンです」が流行すると、現像・印刷の仕事が中心に。スマートフォンなどの普及で現像に訪れる客も激減した。

 人の面影を残す仕事と信じてきた。写真を手にとって見返す文化が減り、さみしい気持ちもあった。「ここ5年かな、思い出は心に残しておけばいいと思えるようになってん」。3月、平成の終わりが迫り、閉店の2文字が浮かんだ。

   ◇  ◇

 「無表情はあかん。生きとるっちゅうのが伝わらんと」。赤ちゃんの撮影は笑顔や大泣きの一瞬を狙った。その子が成長してスタジオの椅子に座り、やがて親の後ろに立ち、大人になってわが子を連れてくる。そんな日々が楽しみだった。

 機材や小道具のおもちゃは市内の学校や幼稚園に寄付。閉店の20日は常連客が訪れてねぎらった。福田さんが言った。「店がなくなっても写真は人が生きてた証拠やから。その心は、誰もが持っていてほしい」

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