三田

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各地の景観やまちづくりを研究する一環として妖怪について調べている大平和弘研究員=県立人と自然の博物館
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各地の景観やまちづくりを研究する一環として妖怪について調べている大平和弘研究員=県立人と自然の博物館
(左上から時計回り)ぬえ、かっぱ、りゅう、ひだる神(県立人と自然の博物館提供、イラストは元スタッフ谷口春菜さん)
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(左上から時計回り)ぬえ、かっぱ、りゅう、ひだる神(県立人と自然の博物館提供、イラストは元スタッフ谷口春菜さん)
(左上から時計回り)かまいたち、びんぼうがみ、かしゃばば(県立人と自然の博物館提供、イラストは元スタッフ谷口春菜さん)
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(左上から時計回り)かまいたち、びんぼうがみ、かしゃばば(県立人と自然の博物館提供、イラストは元スタッフ谷口春菜さん)

 「砂かけ婆」に「海坊主」。暑い夏、名前を聞くだけでひんやりしませんか? -。妖怪に詳しい兵庫県立人と自然の博物館の大平和弘研究員(33)=造園学=によると、県内には109の妖怪が存在し同県三田市内には4種類が伝わる。各地に妖怪伝説が残るのは災害の記憶や生活の知恵、人の命が奪われた悲惨な事件を後世に伝えようとした先人のメッセージなのだという。(門田晋一)

 県内各地に妖怪の伝説があり、多くの民俗資料にも記述がある。その理由について大平研究員は「動物や植物を妖怪に見立て、事故や災害が起きる危険性が高かったり、人が命を落としたりする場所を伝えているものが多い」と解説する。

 三田に伝わるのは「夜泣き石」「かっぱ」「竜」「ひだる神」だ。

 江戸時代に三田藩主だった九鬼家の殿さまが御霊神社(貴志)で見つけた石を気に入り、城の庭石に持ち帰ると、毎晩「貴志へ帰りたい」とすすり泣く女性の声が聞こえるようになった-。そんな民話が残る夜泣き石は、同神社に「茶臼石」とも呼ばれて残る。

 「石を庭に据えたけどしっかり接地できず、ちょっとした隙間を抜ける風が泣き声に聞こえたのかもしれない」と大平研究員は可能性を指摘。「人の持ち物を勝手に持ち帰ってはいけないということも伝えているのだと思います」

 かっぱは全国各地に記録が残るが、「兵庫県民俗資料」(兵庫県民俗研究会著)に旧高平村に多く住んでいたとの記述があり、堤防に穴を開けるので村人が退治したことが記録されているそうだ。

 「かっぱはオオサンショウウオやニホンカワウソが元になっている。氾濫が多い場所の整備を怠らないことへの意識付けや川へのポイ捨てを注意してきれいな水を保とうとする狙いがある」。永沢寺では女性になった竜が開祖を訪ねて現れたと伝わる。

 ひだる神は具体的な出没場所は分からないが山道で人にとりついて飢え死にさせるという恐ろしい妖怪だ。「山は天候が変わりやすく、事故も多い場所で何が起こるか分からない。食べ物を持って出ることを促すために生まれた」

 大平研究員は「良いことがあれば神としてあがめられる一方、災いが起これば妖怪になってエピソードが残る。今の生活にも通じる話として妖怪に親しんでほしい」と呼び掛ける。

■妖怪が不気味な姿で描かれるわけとは

 妖怪が不気味な姿で描かれる理由を大平和弘研究員は「分類学がなく図鑑など動物を調べる手段がなかった影響が大きい」と話す。

 江戸末期から明治初期の浮世絵師歌川芳員の作品で、平安時代の京都が舞台の「源頼政鵺退治之圖」には「ぬえ」が登場。頭はサル、体はタヌキ、尾がヘビ、手足がトラで、深夜に「ひょーひょー」という鳴き声を上げて二条天皇を病気にさせたとされる妖怪だ。

 大平研究員は、鳴き声の特徴と夜に聞こえるといった伝承からぬえの正体を鳥類の「トラツグミ」の可能性を指摘。「何も見えない暗夜に聞こえる不気味な声が空想の動物として恐ろしい姿となった」とする。

 退治されたぬえは鴨川に捨てられ、芦屋の浜に漂着したとされる。芦屋公園(芦屋市)には今も「ぬえ塚」が残る。

 また、尼崎や西宮に伝わる「砂かけ婆」は体の土を払うタヌキを見間違えた可能性も。「昔の人は自然をよく観察し、自然を恐れる気持ちもあったことが妖怪の姿につながったのだろう」

■神戸・阪神間などに出没したとの言い伝えが残る妖怪(レア度、危険度は「3」が最高)

 【たかにゅうどう】西宮市に伝承されている。人が見上げれば見上げるほど背がどんどん高くなるが、正体はタヌキやキツネが化けたものといわれることが多い。江戸時代は妖怪の親玉として描かれていた。(レア度3、危険度2)

 【すなかけばばあ】西宮市や尼崎市に伝わる。頭上から砂をまいたり、砂をまく音を出すが、正体は土を払うタヌキという説も。(レア度3、危険度1)

 【たぬき】タヌキは県内各地に出没。音を出したり人に化けたりして人をおどかす。人に化けて芝居見物をするのが大好きな洲本市に住む「芝右衛門狸」は、日本三名狸として知られる。(レア度1、危険度2)

 【めくらべ】神戸市に伝わり、庭にコロコロ転がってギロリとにらんでくる。だんだん合体して1つの巨大なドクロになるが、怖がらずににらみ返せば消えてなくなる。(レア度3、危険度2)

 【ぬえ】京都で退治されたぬえの死体が、鴨川に流されて芦屋の浜に流れ着いたとされる。黒雲とともに現れ、不気味な声を出して人を病気にする。(レア度3、危険度3)

 【あぶらかえし】伊丹市、宝塚市に伝わる。初夏の夜や寒い冬の夜に現れるといわれ、中山寺の油を盗んだ者の魂やキツネ、オオカミという説もある(レア度3、危険度1)

 【たけぶんがに】尼崎市や明石市に伝わり、落ち武者のような顔をした甲羅をもって浜辺に現れる。南北朝期に無念に死んだ秦武文が妖怪となった姿といわれているが、正体はヘイケガニというカニの仲間とみられる。(レア度1、危険度1)

 【おきくむし】姫路市や尼崎市に伝わり「お菊虫」と書く。井戸の周辺や庭先に姿を現す。播州皿屋敷で有名な後ろ手にしばられて死んだお菊さんが妖怪になった姿だとされている。(レア度1、危険度1)

※神戸・阪神間に出没したとされる妖怪のイラスト

■神戸・阪神間以外の兵庫県内地域の妖怪(レア度、危険度は「3」が最高)

 【おに】たつの市、養父市に伝わる鬼は大みそかや正月に人を食べる。兵庫県内の鬼にもいろいろ種類があり、クモに化けて人を食おうとするものもいた。(レア度1 危険度3)

 【おくりおおかみ】相生市や加西市に伝承があり、夜の山道で後ろからつけてくる。つけられている時に転ぶと食い殺されてしまう。無事に家に帰れたときは、送ってもらったお礼に片方のわらじとにぎり飯をあげれば満足して帰る。(レア度2 危険度3)

 【おおにゅうどう】佐用町など旧播磨国に伝わり、夜の山奥で大人をおどろかす。大きさは3メートルくらいから山をまたぐようなものまで幅広い。(レア度3 危険度1)

 【あまんじゃく】多可町に伝わり「あまのじゃく」とも呼ぶ。あべこべのことを言い、いたずら好きでとても力持ち。県内のあまんじゃくはとても大きく、大岩を使って山から山に橋をかけようとするくらい力持ち。(レア度2 危険度2)

 【ぬしまじょろう】「沼島女郎」と書き、南あわじ市に伝わる。とても不細工な顔で釣り人に釣られるが、後醍醐天皇の皇子である尊良親王の妃が描いた1枚の絵が魚となった姿とされる。(レア度1、危険度1)

 【だいじゃ】加東市、丹波市などに伝わり「大蛇」と書く。人を襲ったり、天変地異をおこして村を破壊したりする。川や沼、大地などの守護神で大蛇退治の伝承や、大蛇にちなんだ伝統行事が多く残っている。(レア度1、危険度3)

 【うみぼうず】明石市や洲本市に伝わり「海坊主」と。海から現れて船をしずめようとする。海坊主が出たら焦らずに海水を杓子ですくって投げかけ、その杓子の底を抜いて海に流すと良いされる。(レア度3、危険度3)

 【かまいたち】豊岡市に伝わり、あぜ道などを歩いていると気付かないうちに手足が傷つけられるという。つむじ風に乗って現れ、すぐ消えるため姿を見た人はほとんどいないそうだ。(レア度2 危険度3)

 【かしゃばば】「火車婆」と書き、宍粟市では葬儀中に現れて死人をさらう。生前に悪いことをした人を地獄につれていき、死体を自分で食べてしまうものもいた。(レア度3 危険度2)

 【おさかべひめ】「刑部姫」は姫路市に伝わり、姫路城の天守閣に隠れ住んで城を守る。今は刑部大明神として祭られている。(レア度3 危険度1)

 【きつね】県内で広く見られ、人を化かしたり、取りついたりする。キツネに取りつかれた人がいたら、たくさんの油揚げと赤飯を食べさせると離れてくれるかもしれないとされる。(レア度1 危険度2)

 【ばけねこ】宍粟市や福崎町に伝わる「化け猫」は、人の言葉を話したり、人に化けたり、死人を操ったりする。年を取ると、尾が二股に分かれてくる。飼い主との関わり方で良い化け猫にも悪い化け猫にもなる(レア度1、危険度2)

 【がんばりにゅうどう】「加牟波理入道」と書き、姫路に伝わる。トイレをのぞいてくるが、時としてその家に福をもたらす。大みそかにトイレで「ガンバリ入道ホトトギス」と唱えると、他の妖怪を追い払ってくれたり、黄金をくれたりするらしい。(レア度2、危険度1)

【びんぼうがみ】養父市には「貧乏神」が伝わる。お金がたまらない人は貧乏神がついているのかも。大みそかに貧乏神の嫌いな辛いものを食べると追い払える。(レア度2、危険度2)

※兵庫県内(神戸・阪神間以外)で出没したとされる妖怪のイラスト

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