三田

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南端の岩肌にあるくぼみが足跡とされる=羽束山山頂
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南端の岩肌にあるくぼみが足跡とされる=羽束山山頂
鈴鹿山佐太郎の墓を説明する岡村隆夫さん=三田市木器
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鈴鹿山佐太郎の墓を説明する岡村隆夫さん=三田市木器
挿絵・岩本芳子さん
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挿絵・岩本芳子さん
挿絵・岩本芳子さん
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挿絵・岩本芳子さん

 「天狗? 馬の足跡やろ」。兵庫県三田市の西田孝夫さん(72)が言った。

 羽束山の山頂(標高524メートル)に案内してもらうと、岩場に直径20センチほどのくぼみが確かにあった。これが天狗の足跡かと思いきや、地元では、源義経が白馬に乗って飛びたった時に付いた跡と伝わるという。

 調べると、付近にはちゃんと義経伝説も残っていた。平氏追討に向かう義経に、志手原の村人が戦勝祈願の総踊りをしたらしい。また、興福寺(木器)にある観音像は義経の持仏だったという伝承もある。ただし、民話は力士の力太郎が主人公。相手が義経では、やっぱり話がごちゃごちゃしたのかもしれない。

 それから、力太郎の行方を探すと、創業130年の造り酒屋「岡村酒造場」(同市)の5代目杜氏、岡村隆夫さん(75)がにやり。「うちに墓があるで」

 猪倉峠のふもとに墓地があり、亀の形をした岩の上に石碑が立つ。刻まれた名前は「鈴鹿山佐太郎」。かつて岡村家が雇い、有馬郡で盛んだった地域相撲の人気力士だったという。

 その知名度から石碑は地域の目印にもなり、「鈴鹿山佐太郎のもみの木」は地元の別の民話にも登場する。しこ名は木器に近い鈴鹿の地名を取ったのだろうか。「同じ太郎やろ? モデルになる人物は佐太郎の外に考えられへん」。岡村さんは力強く話した。(山脇未菜美)

   ◇   ◇

■三田の民話「力太郎と天狗」

 羽束山のてっぺんの岩に、足形のようなくぼみがある。天狗が飛び立った際の足跡と言われる。

 羽束山のふもとの木器村に、体の大きな太郎がいた。相撲で負け知らずになると、自分ほど偉い者はいないと思うようになった。

 ある時、村の娘が行方不明になり、天狗にさらわれたという噂が広がった。誰もが怖がる中、太郎は1人で羽束山へ登り始めた。

 頂上で「天狗出てこい!」と叫ぶ。毎日続けた3日目、声がした。勝負を挑むと「かかってこい」と返事がする。太郎は「娘を返せ!」と飛び掛かった。だが押し返され、ついに力尽きてしまった。

 すると、「娘などさらっていない。何かの間違いじゃ」と天狗が姿を現した。赤い顔、高い鼻は怖そうなのに、どこか優しくもある。「娘は探してやろう」と言う。そして「力が強いだけでは相撲取りでないぞ」と語り掛けてきた。

 「強さは相手を思いやる心がなければならぬ。心をこめて相撲をとれ。気持ちや思いをくみ取り、相手の良さを素直に認めよ」

 太郎は身にしみた。自分はうぬぼれていた-と心から思った。

 間もなく、娘は帰ってきた。

 それから太郎は家の手伝いをよくし、相撲部屋に入って誰よりも熱心に稽古をした。胸を借りた先輩や仲間には感謝し礼を言った。

 関取になると強さに加え、技や態度が観客を引きつけ、声援のあがる人気力士になったそうな。

 「いよー、名力士、力太郎!」

(三田市「三田の民話100選」から。挿絵は岩本芳子さん)

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