三田

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赤澤宏樹主任研究員
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赤澤宏樹主任研究員
塀を越えて育つサクラの景観(1888年)
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塀を越えて育つサクラの景観(1888年)
佐用町三河地域での古写真展の様子
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佐用町三河地域での古写真展の様子

 「美しい景観」「○○らしい景観」とよく言われますが、美しさにも○○らしさにも個人の好みが多く含まれています。みんなで町並みや景観を考える時、意見の幅がとても広く、主義主張がぶつかることもあるのはこのためです。その土地の歴史や風土、暮らしをふまえて、多くの人が「いいな」と共感できる景観を知るには、どうしたらよいでしょうか。

 今では気軽に写真が撮れますが、デジカメが普及する前は「よし! 撮るぞ!」と考えて撮った写真が多いように思います。昭和中期以前に撮影された古写真(こしゃしん)には、今から半世紀以上前の「美しい景観」「○○らしい景観」が映されています。人と自然の博物館に収蔵されている日本最古級の写真集『Views and Costumes of JAPAN』(1888年)には、江戸末期から明治期にかけての貴重な景観が映されています。

 上の写真は、まだ街路樹の概念がなかった130年前に、個人宅のサクラが塀を越えて大きく育ち、まちを彩っているものです。ここには、美しいサクラの姿だけでなく、自分の責任でサクラを大切に育て、まちも美しくする人々の「美しい心」も映っています。

 読者の皆さんのタンスに眠る古写真にも、実家の周りの自然や、まだ庭木が小さい買ったばかりのマイホーム、笑顔で遊ぶ子ども達など、いろんなものが写っているはずです。今はなくなってしまったものも増えたものもいろいろとあって、見ていると何が大切かわかります。

 人と自然の博物館では、地域の皆さんから古写真をお借りしてデジタル化し、データを収蔵する事業を進めています。それらを用いて地域で古写真展を開催すると、「この景観を残したかった」「ここでは○○をしていた。今の子ども達にもさせてあげたい」などとさまざまな意見がでて、共感が生まれます。個人の好みにとどまらず、共通体験の記憶とセットになった景観は、未来につながる価値を持っているのです。

 古代ローマ人の考え方に「背中から未来に進む」というものがあるそうです。前(未来)だけ見て将来を考えても、誰にも未来のことはわかりませんし、不安です。しっかりと後ろ(過去)を振り返り、自分たちの価値を共有しながら、背中から未来に進むという方法もあるのです。このような考え方をする時、見ただけで理解し共感できる古写真は、とても貴重で有益な資料となります。

 皆さんのまちでも、古写真を集めてみて、みんなで話してみてはいかがでしょうか。

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