兵庫県三田市の農家森本悦児さん(85)宅を取材で訪れた際、玄関先で気になる干し柿を見つけた。柿を竹串に刺している。ほとんどは軒先で縄に引っかけているだけなのに、そこだけ違うのはなぜだろう。
よく見ると2本の縄を垂らし、小ぶりな柿を8個ずつ刺した竹串3本を上下平行にしている。縄と竹串が格子状に交わり、なんだか幾何学模様のようだ。
「昔からやっとる縁起物です。最近は少なくなったかなあ」
実はこれ、語呂合わせを込めているのだという。竹串1本につき、両縄から左右の外側に2個ずつ、そして内側に4個ずつ-。それで「夫婦いつもニコニコ(2個2個)、仲良(中4個)く」だそうだ。
「へえ~」。隣で聞いていた30代の男性JA職員も感心した様子。早速スマートフォンを取り出し、「干し柿 いつもニコニコ」でネット検索を始めると、あれあれ…。
両外側の「いつもニコニコ」はその通りだが、後半は「仲むつ(中六つ)まじく」が全国的な風習とあり、両縄の内側は「6個」を干すのが一般的とある。
これを聞いて「何十年も間違ってたわ」と苦笑いする森本さん。串の真ん中を眺めながら「ここに6個は入らへんなあ、もうちょっと竹串を長くせなあかんか…」と思案するのを見て、ほほえましく思った。
いえいえ、森本さんの家だけ4個でもいいじゃありませんか。奥さまと「仲良く」しようとし続ける、その気持ちこそが大事だと思います!(小森有喜)
