約100年前の米国製蓄音機で昔のレコードを聴くイベントが22日、兵庫県三田市学園5のワシントン村ビレッジセンターで開かれた。午前と午後、2回の公演には計約60人が参加。洋風木造建築で高い天井が特徴的な同センターに、温かみがあり奥行きの深い蓄音機の音色が響き渡った。
学園地区ふれあい活動推進協議会が主催し、一般財団法人日本蓄音機倶楽部(クラブ)(同県宝塚市、梶山泰男代表理事)が協力した。同法人はオーディオ文化史研究家・故品川征郎(せいろう)さんのコレクションを継承し、400台超の蓄音機と20万枚以上のSPレコードを保有する。
会場には大きな箱形の蓄音機「クレデンザ」が持ち込まれた。本体のハンドルを回してレコード盤を動かす機械式で、1920年ごろに作られたとみられる。
イベントでは高峰秀子さんの「銀座カンカン娘」やマリリン・モンローさんの「帰らざる河」のほか、ジャズやシャンソンなどの名盤11曲を次々に披露。曲の合間には、同会理事の水野充博さん(59)=神戸市兵庫区=と顧問の明石尚武さん(78)=三田市=が軽妙な解説を加えて会場を沸かせた。
水野さんは「SPレコードは針を替えても100回程度しか再生できない。命を削って流す音を、目を閉じて味わって」と呼び掛けた。参加者は最近のデジタル再生技術では味わえない、昔ながらの音を楽しんでいた。
長年の蓄音機ファンという男性(67)=神戸市北区=は「晩秋の林を見渡せる開放的な空間で、心地よい音楽を味わえた」と満足げ。企画した同協議会の木村寛三さん(72)は「経験したことのない音に驚き、心が温まった。コロナ禍でも、感染リスクの低い音楽の味わい方だと感じた」と話していた。(高見雄樹)
