訪問理美容、コロナで需要増 三田で専門サービス提供の団野さん

2021/05/07 05:30

車いすに座った中江卓巳さんをカットする団野圭輔さん=三田市

 新型コロナウイルス禍が長期化する中、高齢者や障害者向けの「訪問理美容」が注目を集めている。兵庫県三田市内で専門サービスを提供する団野圭輔さん(35)=同市=によると、外出を控える動きもあり、個人利用が1・5倍に増えたという。(小森有喜) 関連ニュース 【写真】写真撮影をセットにしたサービスも 午前2時まで営業の美容院 常連のリクエストで深夜営業に コロナ社会のおしゃれに、すっきり明るい「マスクヘア」 美容師たちがインスタで発信


 4月、団野さんが車いすで生活する中江卓巳(たくみ)さん(28)=同市=宅を訪れた。持ち込んだのははさみやドライヤー、掃除機が入った大型スーツケース二つ。車いすに座る中江さんの前に鏡を置き、首回りにクロスをかけた。
 「暖かくなってきたし、さっぱりしましょうか」と団野さん。中江さんがOKサインで応えた。
 中江さんは21歳の時、バイクで事故に巻き込まれ、全身まひと高次脳機能障害を負った。三田には一家で4年前に移ってきた。両親が中江さんの美容室を探したが、車いすが入れないなどの制約があり、なかなか見つからなかった。そんな時、インターネットで団野さんを知った。
 事故後の障害で、中江さんは感情が不安定になることもある。それでも「団野さんは卓巳のペースに合わせてくれる」と母陽子さん(56)は安心して見守る。今では2カ月に1度利用する常連で、父の満さん(58)も一緒に髪を切ってもらうようになった。
 団野さんは三田市出身で、有馬高校を卒業後、専門学校で理容師と美容師の資格を取った。三田のサロンで修業を積む一方、介護が必要な自身の祖父母の髪を自宅で切っていた。「同じように困っている人がいるかも」。介助技能などを身に付けた認定資格「福祉理美容師」を取得。4年前に訪問理美容サービス「ディライト」を立ち上げた。
 道具を携え、個人宅や高齢者施設などを訪問。コロナ禍で入れない施設が増えた一方、外出を控える個人の高齢者らからの注文は、月約30件から約50件に増えた。
 中江さんのカットを終えた後、団野さんははさみをカメラに持ち替えた。本格的な照明セットも準備し、家族3人にレンズを向ける。以前からフリーのカメラマンとして活動していることもあり、3月から新サービスとして始めた。「もっと寄り添って~。いいですね」。笑顔の瞬間、シャッターを切った。
 団野さんは「『外出ができないから助かった』と言ってもらえ、こちらも力をもらえる。サービスの価値を伝えていきたい」と話している。
 カットとドライシャンプー、眉カットのセットが税込み3850円。カラー、パーマ、写真撮影などは別料金。日曜、祝日定休。ディライトTEL090・6978・1193

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