物言わぬ戦争の“語り部”ふるさと学習館で展示 三田空襲も紹介

2021/08/06 05:30

戦時下の三田の様子が分かる写真や暮らしが分かる展示品が並ぶ会場=三田市屋敷町

 太平洋戦争中の人々の暮らしについて伝える「平和をねがう戦争展」が、兵庫県三田市屋敷町のふるさと学習館で開かれている。NPO法人「歴史文化財ネットワークさんだ」が企画し、戦闘帽やもんぺ、戦地から送られた手紙といった市民が所有する貴重な品々のほか、三田、神戸市内などで撮影された写真を並べている。31日まで。(小森有喜) 関連ニュース 中国残留婦人2世、母と自身の苦難語る 明石で戦争体験談の集い 支援なく言葉の壁も フィリピンで父殺され、戦後10年逃亡 念願の日本国籍回復も「手遅れだよ」 【戦争遺跡調査】物言わぬ証言者、どう残す 全容把握急務、新発見も


 写真は全部で15枚。現在の三田市中央町付近で撮影された防空訓練には、バケツリレーをする頭巾姿の女性が写っている。旧有馬郡・中野村立加茂小学校(のちに三田市立広野小に統合)では、女児がなぎなたを持って訓練する様子も。また、具体的な撮影地は不明だが、大勢の子どもの前で教師が日本軍の戦果を伝えているものもある。黒板には「大戦果あがる」「兵隊さんに感謝」といった文字が並ぶ。
 このほか、展示品は約50点ある。娯楽品などを入れ戦地の兵士に送った慰問袋には「祈武運長久」と書かれており、婦人会のたすきや旭日旗もある。戦地で使われた鉄製のヘルメットや戦闘帽、水筒も並ぶ。また、終戦後に使われた黒塗りの教科書を見ると、「兵タイゴッコ」といった文字が墨で消されている。
 三田市の中後茂さん(84)は、31歳で戦死した父・活也さんが戦地から送ったはがきの複製を寄贈した。妻の安全やわが子の成長を気にかける内容だが、宛名の横には「検閲済」と押印されており、当時の情報統制の厳しさをうかがわせる。
 茂さんは「父の命を奪った戦争について知ってもらい、二度とあってはならないことだと感じてもらいたい」と話している。
 このほか、パネルで「三田空襲」についても紹介。終戦間際の1945(昭和20)年7月、三田駅周辺で児童4人と女性1人が米軍機に銃撃され亡くなった地点や、三輪会館に現存している銃弾が貫通した半鐘についても紹介している。
 無料。午前10時~午後5時。月曜休館。同館TEL079・563・5587

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