開け!プロ野球への扉 きょうだい9人の期待背負って 神戸三田ブレイバーズの柏木選手

2021/10/07 05:30

ドラフト指名が期待される柏木寿志内野手(球団提供)

 11日のプロ野球ドラフト会議が迫ってきた。兵庫県三田市では、さわかみ関西独立リーグ球団「神戸三田ブレイバーズ(Bs)」に所属する柏木寿志(かずゆき)内野手(19)の指名に注目が集まる。実家は長崎県で、9人きょうだいの大家族。高校卒業後、実家の経済的負担を減らそうと、大学ではなく独立リーグで野球を続ける道を選んだ。「恩返しのためにもNPB(日本野球機構)に行きたい」と吉報を待つ。(小森有喜) 関連ニュース 高校界屈指の左腕、駅員に ソフトバンクや社会人野球経て 甲子園準V球児“瀬戸内のドカベン” たこ焼き屋で再起 イチローのバットへし折った26歳元巨人投手、独立リーグで再出発 下手投げに転向

 佐世保市出身で、男6人女3人きょうだいの7番目。兄と姉にならって小学3年からソフトボールを始め、中学で硬式野球のシニアに所属、高校は九州文化学園高校(佐世保市)に進んだ。部員が100人以上いる強豪で1年生からベンチ入り。3年生では主将として春の県大会決勝にチームを導いた。
 大学から特待生として誘いもあったが、アルバイト不可で、生活費や野球道具代を親に頼らなければいけないことが気掛かりだった。そんな中、神戸三田Bsから声が掛かり、「独立リーグなら(大学卒業までの)4年を待たずNPBに行けるかも」と、昨年春に入団した。
 柏木さんは「家族のおかげで野球を続けられていると思う」としきりに感謝を口にする。1年目のシーズンは木製バットへの適応に苦しみ、打率は1割台に。自信が打ち砕かれた。
 そんな中でも、父浩一さん(55)、母マリアさん(53)が電話やLINE(ライン)で頻繁に励ましてくれた。「焦らずやればいい」「それだけ一生懸命やってくれていることが親としてうれしい」。優しく声を掛けられるたび、前を向けた。
 現在は居酒屋のアルバイトで生計を立てつつ、寮でチームメイトと暮らす。洗濯や料理など家事はすべて自分でこなしており、「実家のありがたさが身に染みます」と苦笑する。
 昨シーズンのオフに帰省した時は、中学でソフトボール部に所属する妹仁美さん(13)が、自主トレーニングの相手をしてくれた。ゴロを転がしたり、ティーバッティングを手伝ってくれたり。基本の動きを体にたたきこんだ。
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 冬を越え、今シーズンはチームの柱として活躍を続ける。5番打者に定着し、打率は2割4分台ながら本塁打はチーム最多の4本、盗塁はリーグ最多の29個を記録。オフの基礎練習が実を結び、守備でも軽快な動きを見せる。
 打撃面での開花の裏には、プロ野球近鉄や横浜などでプレーした大西宏明さんの助言があったという。昨年9月にリーグの選抜チームに選ばれた際、監督を務めた大西さんからスイングがコンパクトすぎることを指摘された。「若いし可能性がある。もっと体全体を使って飛ばす意識でやってみて」
 そこからは、バットが外回りする「ドアスイング」にならないよう体の内側からバットを出すイメージを持ちつつ、強く大きく振れるフォームを目指した。オフの筋力トレーニングの効果もあって飛距離が格段に伸びた。
 今シーズンの成績には「まだまだ満足していない」と語るが、10月上旬に読売ジャイアンツから声が掛かってトライアウトを受けるなど、走攻守そろった内野手として注目度は高い。
 「ドラフトが近づくにつれ、気持ちが落ち着かなくなってきた。不安の方が大きいけれど、家族やお世話になった人のためにも指名を受けたい」と柏木さん。ドラフト会議は11日午後5時から。チームメイトや関係者とともに結果を見守る。

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