<関学研究室から~神戸三田キャンパス>地域経済と交通を研究 総合政策学部・平松燈教授

2022/02/13 05:30

平松燈教授

 地域では多様な人々が日常生活を営んでいます。地域の課題には、地域経済の活性化や土地利用、渋滞などがありますが、少子高齢化や環境問題、国際化、雇用、教育、観光など、現代社会の課題の多くも地域の課題です。また、各地域に特有の課題や過疎・過密のように地域間の関係にも課題があります。これらは多面的で複合的に絡み合っています。私は総合政策学部で地域経済学を活用して、地域経済と交通の関係について研究しています。

 地域経済には財・サービスの市場や労働市場、不動産市場など数多くの市場があります。また、人々の移動や財の輸送には交通も重要です。地域経済について議論するとき、論点を絞って各市場を分析することは重要で、経済学では「部分均衡分析」といいます。例えば労働市場では、労働需要が高まると賃金が上昇します。
 経済活動は市場間でお互いに影響します。従って、複数の市場を、同時に分析することも重要で、このような分析は「一般均衡分析」といいます。例えば、賃金が上昇して人々の所得が増えると、財・サービスや住宅の需要が高まります。各産業が需要の上昇に対応して、より多くの労働者を雇用すると、さらに賃金が上昇します。
 経済活動は地域間でも影響を及ぼし合いますから、複数の地域を同時に分析することも大切です。例えば、地域の賃金が上昇すると、雇用機会を求めて、他の地域から人口移動が起こります。人口流入により地価が上がると、郊外へ引っ越す人もでてきます。郊外では住宅開発が進み、通勤のための交通需要も増えます。特急駅ができると、さらに人口が増加するでしょう。
 経済学の利点には、研究に必要な要素だけをモデル化することで単純化し、明快に分析できることがあります。一方、一般均衡分析の長所は現実的で全体像を捉えることですが、短所は複雑なことです。そこでコンピューターを使ってプログラミングを行い、数値的に分析する方法があります。これを「応用一般均衡分析」、地域が複数ある場合は「空間的応用一般均衡分析」といいます。私はこの手法で地域経済をシミュレーション分析しています。地域経済シミュレーションソフトを作成し、研究に活用しているイメージです。
 多様な人々が暮らし、多くの市場や地域を持つ地域経済について、経済学者の問題意識を持って、経済理論やシミュレーションにより分析することは、総合政策学部出身の私にとって、ぴったりな研究と思います。

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