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「兄を超える消防士になりたい」と話す藤永兼太さん=三田市福島
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「兄を超える消防士になりたい」と話す藤永兼太さん=三田市福島
日々想定訓練に取り組んできた(提供)
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日々想定訓練に取り組んできた(提供)

 神戸医療福祉専門学校(兵庫県三田市福島)の救急救命士科を卒業した藤永兼太(20)は4月から、故郷の消防隊員になる。「こんなに苦しく、楽しかった2年間はない」。仲間と訓練を重ねた日々に、自然と涙があふれる。感染症対策を講じる学生生活を経て、命と向き合う覚悟を持った。

 小走りでやって来て、はきはきとあいさつする。卒業後も学校に足を運ぶ。救急救命士の国家試験の結果を待ちながら、後輩の実習を指導してきた。

 愛媛県今治市出身。地元で消防士として働く9歳上の兄を追って、高校卒業後、兄の母校に入学した。

 1年で心肺蘇生法や点滴の打ち方など、基本の応急処置を学ぶ。2年になると教わったことを応用し、119番内容に合わせた対応を実践で身に付ける。4年制大学などで国家資格を取得する道もあったが、短い期間で集中しようと最短の2年で受験できる専門学校を選んだ。

 ビデオ会議アプリ「ズーム」で始まった授業に「最初はみんな『誰?』って感じ。分からないことを相談する相手もいなかった」。実技はなく、通報内容から必要な資機材や応援の必要性の有無を考えるオンライン授業で覚えていった。

 対面での授業が再開し、クラスメートとの関係は築けたが、学園祭やスポーツ大会は中止に。病院へ赴き、患者の処置にあたる実習は期間が半分に短縮された。「十分できていない悔しさはある。ただ、実習と実際の現場は違うから、まっさらな気持ちで頑張ろうと思っています」

 班ごとに取り組む実技では班長を務めた。朝と放課後に救急を想定したシミュレーションの自主練習で集まり、帰宅後はズームをつないで授業の復習をする。班長同士でも毎日ミーティングをして、苦手があるメンバーをチーム全体でサポートした。「時間はいくらあっても足りなかった」。焦りから、授業中に寝ているクラスメートに苦言を呈したこともあった。2年間で、「人や命と向き合う仕事だから、失敗は許されない」という思いを背負うようになった。

 うまくいかず涙を流す仲間に声を掛け、一緒に乗り越えた。同じ思いを持って成長できたから、昨秋、選抜メンバーで出場した「西日本学生救急救命技術選手権」では優勝を果たした。

 生活費や家賃のために週5日はアルバイト。帰ってトレーニングをしたら、朝まで勉強をして1時間の睡眠で登校することもあった。でも、コロナ禍があったから強くなれた。「授業時間が短くなったんや。(学びの)質を高くせなやばいぞ」という気持ちが机に向かわせてくれた。

 4月、今治市の消防本部に就職することが決まっている。地元は大都市ではない。「大病院が少ないからこそ、搬送先など、現場での判断が患者の状態を大きく左右する」。技術だけじゃない。2年間で学んだコミュニケーションや思いやりの大切さを、現場で生かす。

=文中敬称略=

(喜田美咲)

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