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コロナ禍における大学生のストレスを調査した原田朋佳さん=関西学院大学西宮上ケ原キャンパス
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コロナ禍における大学生のストレスを調査した原田朋佳さん=関西学院大学西宮上ケ原キャンパス
大好きな祖父と一緒に(提供)
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大好きな祖父と一緒に(提供)

 コロナ禍で「どん底」だった高校時代の記憶がよみがえった。不登校、引きこもり、中退…。感染が拡大したのは、原田朋佳(23)=神戸市北区=が関西学院大学3年生の時だった。

 テレビには屋外で騒ぐ若者の集団が映し出されていた。酒を飲み、大声を出し、泥酔して道に倒れ込む。若者がコロナを広げているような風潮があった。

 実家暮らしの朋佳は祖母にうつすことを心配し、住んでいる北区から出なかった。講義はオンラインで友達にも会わない日々だったが、「どん底を経験したから、コロナ下でもポジティブでいられたんです」。今の朋佳は笑顔が絶えない。

 だが周囲はそうではなかった。泣きながら電話してきた友達がいた。騒ぐ若者がいるのも事実だが、苦しんでいる若者には光が当たらない。「大人にとっては低い壁に見えるかもしれないけど、中高生や大学生にとってはめちゃくちゃでかい壁」。経験したから分かる。卒業論文のテーマが決まった。

            

 母も姉も地域1番の進学校・兵庫高校の出身で、朋佳も同じレールを歩んだ。友達はたくさんいた。いじめにあったわけでもない。人には幸せに映っていたかもしれない。

 だが、「優等生」のふりをするのにもやもやしていた。高校に行っても、やりたいことがない。周りを失望させたくない重圧から、人の気持ちばかり考えていた。「自分の人生じゃない」。違和感が募ったが、非行に走る「勇気」はない。

 2年生になり、ぷつっと糸が切れた。不登校になり、昼夜逆転の生活。週に1度は塾に通ったが、その時だけは学校の制服を着て何もないふりをした。

 人に会うのがしんどい。心配してくれる友達も「うざい」。LINE(ライン)やインスタグラム、ツイッターなどSNSは全て遮断した。

 頑張りたいのに頑張れず、ベッドから起き上がれなかった。否定的な考えばかり浮かび、ネットで「ばれない死に方」「迷惑かけない死に方」と検索した。

            

 引きこもってしばらくして、経過観察中だった祖父のがんが再発した。実家の向かいに住み、「大好きなおじいちゃん」。優しくて、明るくて、いつも人が集まっていた。

 亡くなる2カ月前、祖父の誕生日に手紙を贈った。「前に進むから、安心してね」。高校を退学し、不登校を支援する予備校に通い始めていた。最初は週に1こまから。少しずつ時間を増やした。

 祖父は家族に見守られ、最期の一息が分かるほど穏やかに逝った。人には例外なく死が訪れる。自分もいつか死ぬ。17歳の心が揺れた。

 進路を調べていると、死と向き合い、生きる意味を考える「死生学」が関西学院大学で学べることが分かった。勉強を頑張って、大学で学ぶ。祖父との約束でもあった。1年遅れで大学に合格した。=文中敬称略=

(土井秀人)

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