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自室で。就職活動では1日中パソコンに向かっていた=神戸市北区
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自室で。就職活動では1日中パソコンに向かっていた=神戸市北区
原田さんの卒業論文。藤井美和教授に学び、127ページを書き上げた
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原田さんの卒業論文。藤井美和教授に学び、127ページを書き上げた

 就職活動を通じ、過去を全て受け入れたと確信した。

 面接では、不登校や高校を中退した経験をすらすらと話せた。面接官も興味を持って聞いてくれ、楽しかった。「就活を終えた時はさびしくて『就活ロス』になったほど。不登校だったことは私の自慢です」。今春、関西学院大学を卒業した原田朋佳(23)=神戸市北区=が屈託なく笑う。

 祖父をみとり、大学では「死生学」を学んだ。人生の最期に関わる仕事がしたいと生命保険や介護、葬儀などの会社を目指した。自らを「就活ガチ勢(本気で取り組む人)」という。

 150社の説明会に参加し、3年生の12~3月で休んだのは4日間だけ。説明会や面接はほぼオンラインのため、リクルートスーツを着込み、実家のベッドの横でパソコンに向き合った。1日に四つの説明会を見て、夜まで食事を取れない日もあった。

 第1希望の生命保険会社に内定した時はリクルートスーツ姿でスキップした。

            

 就活を終えると、卒業論文に取りかかった。テーマは「コロナ禍における大学生のストレス」。朋佳たちは卒業までの2年間、ほとんど大学に通えなかった。

 ゼミもオンラインで、初対面なのに画面越しで話し合った。「みんな猫かぶって、めっちゃ静か。毎回お葬式のよう」。終わる度に母親に「最悪」と愚痴った。それが3年の終わりに対面授業が始まると、一気に打ち解けた。

 オンラインの就活は前例がなく試行錯誤。直接会ってアピールできないのに、不採用となる。友人たちは電話口で「意味分からん」「何もかも嫌」と泣いた。

 卒論では、全国の学生を調査して326人から回答を得た。キャンパスでも声を掛けまくり、友達の友達にも協力を呼びかけた。

 回答した学生の78%が、コロナ前に比べて将来への不安が増していた。友人関係や経済面、授業についての不安も47~63%の人が増えたと答えた。コロナ禍を過ごした1人として思いを込め、計127ページの論文を書き上げた。

            

 3月18日、朋佳は大学を卒業した。コロナ禍の3、4年生は「一瞬で過ぎた」という。制限された生活の中で、ゼミや就活、卒論をやり切った。

 一方で1、2年生の時は、大学生らしい生活が送れた。飲みに行ったり、一晩中遊んだり、家に泊まったり。この時にできた友達に救われた。「苦しい時にこそ、本当に大切な友達が分かった」

 朋佳が研修のために東京へ旅立つ前日、家を訪ねた。部屋には、不登校の時にずっと寝ていたベッドがあった。死んだ方が楽だと思っていたという。「この部屋に引きこもっていたけど、ここで就活も、卒論も必死にやった。思い出深いですね」

 生きていれば何とでもなる。世界のどこかには、受け入れてくれる場所がある。当時の自分に伝えたい。

 今日から、社会人となる。=文中敬称略=

(土井秀人)

=第2部おわり=

【バックナンバー】
第2部(3)朋佳【上】「どん底」経験 前向きに
第2部(2)兼太 訓練重ね命と向き合う
第2部(1)真由 実習中止で一から探した就職先

第1部(3)彩加 私が幸せなら、親も幸せでしょ
第1部(2)晴人【下】 三田でやれることから
第1部(1)晴人【上】 友達をつくるのは諦めた

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