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シモン氏のコレクションと筆者
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シモン氏のコレクションと筆者
山崎健史主任研究員
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山崎健史主任研究員

■山崎健史主任研究員

 私は、クモ類の系統分類学を専門としており、東南アジアの熱帯地域で多様化したハエトリグモ科を対象に研究しています。ここ数年は、新型コロナウイルスの影響で海外での調査ができていませんが、定期的に東南アジア諸国から標本を集め、学名の付けられていない種を新種として記載したり、系統関係を調べたりするのがライフワークです。野外から得られた標本は私の研究を支える大きな柱の一つです。もう一つ、私の研究で重要な柱があります。それは、博物館に収蔵されている標本です。

 野外で採集された標本はまず、学名を決定する必要があります。この作業を同定といいます。皆さんは、例えば、あるチョウをモンシロチョウと同定する際には、図鑑をもとに名前を決定すると思います。分類学という学問では、その種に学名を付けられた時の原記載論文や、その学名を担う基準であるタイプ標本をもとに学名を同定することが原則となります。

 東南アジアから得られた多様なハエトリグモ類の学名を調べるのは、非常に大変な作業です。図鑑のような便利なものはなく、東南アジアから記載されたハエトリグモ類の原記載論文を参照して、標本と照らし合わせていくしかありません。しかし、文章のみでハエトリグモ類の多様な形態を理解することには、限界があります。そこで、手っ取り早い方法の一つが、欧米の博物館に所蔵されているタイプ標本を観察して、手元の標本を同定することです。

 フランスの首都パリには、フランス国立自然史博物館があり、ここの収蔵庫には、「クモ学の父」と称されるウジェーヌ・シモン氏によって、19世紀後半に世界中から記載されたクモ類の膨大な標本が保存されています。東南アジアのハエトリグモ類を同定するうえでも、欠かせないコレクションの一つです。初めてシモン氏のコレクションを見た時、100年以上も前の標本が、非常に良い状態で保存されていることに感動しました。

 ヨーロッパは博物学が発展してきた中心部であり、標本を全人類の財産として価値を正しく認識し、きちんと保存しています。もちろん、状態の良い標本ばかりでしたので、東南アジアで得られた正体不明の標本も、タイプ標本との比較をもとに、同定作業が進みました。何よりも収穫だったのが、シモン氏のコレクションの中に、おそらく未記載種と思われる新種候補の標本も発見できたことです。いずれ、新種として発表できればと考えています。

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