■小舘誓治研究員
アカマツという木をご存知でしょうか? 関西の里山では主要な樹種の一つです。幹の色が赤っぽいマツ類なので、その名があります。六甲山では広い範囲でアカマツが見られますが、マツ枯れによって年々減少しています。
六甲山地域でセミナーを実施することがあるのですがアカマツの高木を見つけると、その枝の広がる範囲の林床をじっくり見るようにしています。それはあるものを見つけるためです。あるものとは色や形がエビフライにそっくりなものです。山登りが好きな人たちは、これを「森のエビフライ」と呼んでいます。これが見つかればリスが近くにいることが分かります。
リスは球果(きゅうか)である松ぼっくりの中の種子を食べるために種鱗(しゅりん)と呼ばれるヒダのようなものを上手に除去するのです。松ぼっくりの上部のところ(これがエビフライのしっぽの部分に見える)を残して種鱗が除去されると、まさに色、形がエビフライです。
以前(9月下旬)、セミナーを実施しているときにアカマツ高木の下で、ポツン、ポツンと数十秒に1回くらいの割合で次々と種鱗が上方の枝から落ちてきました。話を止めて参加者にそのことを伝えると何人かがリスの姿を見ることができました。(森のエビフライ「じゃない方」の)落ちてきた種鱗をよく見ると、松ぼっくりが閉じた状態のときに表面となる部分が緑っぽい色をしていたのです。リスは、恐らくまだ1度も開いたことのない(赤褐色に変わる前の)緑色の松ぼっくりの種鱗を除去し種子を食べていたのだと思われます。
森のエビフライを見つけたら、その周辺で「じゃない方」の種鱗も探してみてください。その種鱗の内側を観察すると種子の形がくっきり残っているものがあります。これは感動ものです。種子は一つの種鱗に二つずつ収納(挟まれている状態)されています。アカマツとしては硬い松ぼっくりで種子を守っているのですがリスはたやすく(?)種子を食べてしまうのですね。
今年の4月のセミナーでも運よく「森のエビフライ」と「じゃない方」の種鱗を見つけることができました。皆さんも探して観察してみませんか。
