西播

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野尻地区の防火用水から水を引き込んだ飯見地区の水路(下)=宍粟市波賀町野尻
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野尻地区の防火用水から水を引き込んだ飯見地区の水路(下)=宍粟市波賀町野尻
土砂崩れで用水路が寸断された現場。擁壁に渡したパイプとポンプで水を送る=宍粟市波賀町野尻
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土砂崩れで用水路が寸断された現場。擁壁に渡したパイプとポンプで水を送る=宍粟市波賀町野尻
棚田が広がる飯見地区=宍粟市波賀町飯見
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棚田が広がる飯見地区=宍粟市波賀町飯見
ポンプを駆使して川沿いの発電用水路から水をくみ上げる住民ら=宍粟市波賀町飯見
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ポンプを駆使して川沿いの発電用水路から水をくみ上げる住民ら=宍粟市波賀町飯見

 「飯見の郷」ブランドの棚田米で人気を誇る兵庫県宍粟市波賀町飯見地区で、農業用水路が西日本豪雨による土砂崩れで寸断され、住民らは深刻な水不足に直面した。収穫をあきらめる人もいたが、他地区に水を融通してもらい、水を引く順番を定めた江戸時代の“村の掟”まで復活させて夏を乗り切った。無事に稲穂が垂れ、「絆で結ばれた農村の原点を見たよう。今年の米は涙と苦労の結晶だ」と収穫の秋を待ちわびる。

 飯見地区は揖保川支流・引原川沿いにあり、31戸の農家が計17ヘクタールの棚田で県推奨ブランドに選ばれた低農薬米などを栽培している。農家ごとに袋詰めするため少しずつ味が違うのが特徴で、近くの道の駅で開く秋の収穫祭では、毎年10トン以上が2日間で完売する。

 棚田のうち約6ヘクタール分の水は引原川の約5キロ上流から水路を引いて取水しているが、7月7日の西日本豪雨で山腹が崩れるなどし、水路が17カ所で寸断された。二次災害の恐れがあるため土砂は容易に撤去できず、豪雨後は日照り続きで田んぼが乾ききった。

 出穂期の夏場は特に水が必要で、消防ポンプで散水しても効果はなかった。当初は今年の米作りをあきらめる人もいたが、「毎年購入してくれるファンのために頑張ろう」と集落が一致。水路の途中にある野尻地区の防火用水路から取水させてもらうよう、同地区に頼み込んだ。

 同地区も事情を理解し、取水口の谷に堆積していた土砂を除去して水量を増やした。野尻と飯見地区の間でも2カ所で水路が埋まっていたが、パイプとポンプで迂回路を作った。

 豪雨から約10日でようやく水が届いた。しかし稲はすでにしおれ、枯れかかっていた。誰もが自分の田に真っ先に水を引きたいと焦ったが、水量は少ない。水争いに発展しかねない状況を救ったのは、自由に水が使える近年では忘れかけていた「水路の上流側、棚田の上側から順番に引く」という古い“掟”だった。

 水利組合の配水責任者として奔走した大柿直記さん(65)は「飯見は昔から水に苦しんだと聞いたが、われわれには初めての体験。ルールを厳格に守ることで村の団結が保たれた」と振り返る。

 最後の田は順番が回るまで10日ほど待った。その後、ポンプ6台を駆使して川沿いの発電用水路から水をくみ上げ、水量が増加。水を引く順番が4日に1度程度になり、無事に稲穂が膨らんできた。

 ポンプの賃料や燃料代などは市が補助するが、作業の人件費は出ない。ポンプの給油が1時間半~8時間ごとに必要で、住民が当番制で深夜や早朝に作業する。9月上旬ごろまで今の体制を続け、同月中旬ごろに刈り取り。同29、30日には道の駅みなみ波賀で「収穫祭」を予定する。

 農会長の中谷浩臣さん(58)は「稲穂が出なかったら農会長失格と思っていた。今年の米は集落の絆の証し。一粒も無駄にせず食べてもらいたい」と話していた。(古根川淳也)

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