西播

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桜の花越しになだらかな稜線を広げる笠形山(奥)=4月、神河町越知から撮影
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桜の花越しになだらかな稜線を広げる笠形山(奥)=4月、神河町越知から撮影
加古川・高砂の市境にそびえる高御位山=加古川市志方町から撮影
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加古川・高砂の市境にそびえる高御位山=加古川市志方町から撮影
「夢前の播磨富士」こと明神山=姫路市夢前町前之庄から撮影
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「夢前の播磨富士」こと明神山=姫路市夢前町前之庄から撮影
神戸新聞NEXT
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 神崎支局に赴任して3年目。兵庫県の神河、市川、多可の3町にまたがる「笠形(かさがた)山」(標高939メートル)を記事で触れるたび「別名播磨富士」と前置きしてきた。しかし、ほんの少し心に引っかかるものがあった。原因は以前の勤務地、加古川と高砂の市境にある「高御位(たかみくら)山」。実は、こちらも「播磨富士」と呼ばれ、そう記事に書いた覚えもある。いまさら、どっちが正しいと分かっても怖い。でも、放っておくのはもっと怖い。どれが本物?(井上太郎)

 笠形山は、落差が65メートルある「扁妙(へんみょう)の滝」の雄大な氷瀑(ひょうばく)目当てに、真冬もハイカーが足を運ぶ。滝から最寄りの登山口は同県神河町根宇野にあるが、播磨富士たるゆえんは、ここから約6キロ離れた上越知の集落高台から眺めると一目瞭然。視界を遮っていた山々の先に、なだらかな稜線(りょうせん)がくっきりと浮かび上がる。

 江戸期の地誌「播磨鑑(はりまかがみ)」には、京都の女性がかぶる「つまおりがさ」に似ているのが「笠形」の由来とある。そんな端正な山容が富士山にも似ていると、派生した説が有力なようだ。

 一方、高御位山は、標高304メートルと低いが、竜山石の岩肌が目を引く通称「播磨アルプス」の最高峰。元旦に初日の出を拝む大勢の登山客でにぎわう。

 古くから山全体をご神体とした信仰の山と伝わる。20年以上、山頂の神社と登山道の管理を続ける長谷川英樹さん(75)=加古川市=は「きれいな馬てい形だから、よその人が『ありゃ播磨富士や』とゆうたのが始まりじゃないか」との見解を示す。

 取材をすると、実はもう1つ「播磨富士」があった。姫路市夢前町の中央にそびえる「明神(みょうじん)山」(標高668メートル)だ。

 「登山口から間近に『ドーン』と頂が望める山は珍しい」とは、明神山愛好会の板垣一則会長(69)=同市。きれいな円すい形で回りに高い山がなく、近くの夢前川沿いから雄大な輪郭が見える。旧夢前町が姫路市に編入した2006年、住民がふもとに石碑を建て「夢前の播磨富士」と刻んだ。

    ◆    ◆

 三つどもえの播磨富士のように、いわゆる「見立て富士」は、全国津々浦々にある。本家・富士山が世界文化遺産に登録された13年前後に静岡県などが全国で調べたところ、少なくとも340の山が確認された。

 同県富士山世界遺産センターによると、見立て富士は近世以降、大まかに3段階で増えてきたという。全国で組織された信仰集団「富士講」による富士詣ブーム(江戸期)▽日本のシンボルとしての富士山の浸透(戦前戦中)▽登山ブームなどを背景とした観光振興(戦後)だそうだ。

 富士講は、どの地域の人が富士詣に訪れたかを示す宿の帳面が一部残る。登山文化が盛んな近畿にあって、なぜか兵庫が少ない。そのため、播磨富士は、見た目が重視された戦前戦中または戦後の命名と考えることができるが、それ以上の特定は難しいという。

    ◆    ◆

 そろそろ結論に入ります。静岡県などが監修した「ふるさと富士名鑑」(14年、山と渓谷社編)に写真付きで掲載された播磨富士は笠形山。一方、明神山と高御位山も「播磨富士」とされたが、巻末リストに1行収録されるにとどまる。

 富士山世界遺産センターの担当者に本物の見極め方を尋ねると「それぞれの地域で親しみを込めて呼ばれることなので、比べようがなくどれも播磨富士です」。みんな違ってみんないい-。今後、「播磨富士こと笠形山」「播磨富士の異名を持つ明神山」「別名播磨富士で知られる高御位山」なんていう記事が並んだとしても、各山ともども温かい目で見守ってもらえれば…。長い言い訳にお付き合いいただき、ありがとうございました。

■ご当地富士、国内外に400以上 丹波でも七つ

 “ご当地富士”の乱立は播磨だけではない。同じ兵庫県内旧五国の名を冠した「丹波富士」と称するのは、丹波篠山市の「高城(たかしろ)山」「白髪岳」、丹波市や京都府内の山を含めると全部で七つある。その事実を丹波篠山観光協会の担当者に伝えると「高城山だけだと思ったら、あ、そうだったんですね」と気にするそぶりはない。実際、まぎらわしいといった苦情も聞かないという。

 反対に、一つの山が複数の異名を取るケースもある。鳥取出身者が「県民の心の風景といっても過言ではない」と愛する「大山(だいせん)」(標高1729メートル)は「伯耆(ほうき)富士」とも「出雲富士」とも呼ばれる。

 大山のような標高千、2千メートル級の名峰もあれば、100メートル未満の小さな見立て富士も少なくない。また、「ラバウル富士」(パプアニューギニア)、「タコマ富士」(米ワシントン州)など、日本人の出征兵士、在留邦人らが望郷の念から名付けたとみられる約60個の海外版見立て富士も確認されている。

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