50歳で脱サラ・就農、念願のワイン初醸造「ブランド化したい」 姫路

2021/04/06 05:30

上郡町に移住し、育てたブドウでワインを醸造した田中源道さん=上郡町細野

 兵庫県姫路市出身のブドウ農家、田中源道(げんどう)さん(52)が同県上郡町で就農後、初めて本格醸造したワインの販売が始まった。50歳でブドウ産地の同町細野地区へ移住し、引退する農家から畑を引き継いだ。実の皮についた天然の酵母菌を生かした爽やかな味わい。「ぜひ一度味わってみてほしい」と話す。(伊藤大介) 関連ニュース 元銀行マン、定年後に留学、70歳で豪州移住 帰国してブドウ農家 挑戦続ける85歳 シャインマスカットで淡路島の特産目指す 若手農家が生産に挑戦 「当たって砕けろ」70代で沖縄へ移住した理由

 田中さんは、親族が岡山県井原市のブドウ農家だった。幼い頃、実がたわわになった畑で遊んだ記憶があり、「いつかはブドウを作りたい」という夢があった。大学卒業後、姫路市内で27年間、サラリーマンをしていたが、「体力が落ちる前に」と50歳の節目に農家へ転じた。
 長野など主要な産地を巡り、新天地を岡山に見定めていた。ところが、最後に訪れた上郡町細野地区に魅了された。「水はけの良い段々畑、谷筋を流れる清流、山あいに沈む夕日-。美しい景観を含めて、ここにしようと決めた」と振り返る。
 廃業した農家から継承した2500平方メートルに加え、自らも4500平方メートルを開墾して畑にした。ブドウ棚を受け継ぐ際、言われたのが「ベリーAの木は切らないで。細野地区のベリーAはコクの深さが違うから」。寒暖差の大きい山あいで育つ細野のベリーAは味に定評がある一方、房から実が離れやすく、販売価格もシャインマスカットの半値に落ちる。田中さんは「ワインに加工して、細野ブドウをブランド化したい」と醸造を決意した。
 秋に収穫した実を、瀬戸内海に浮かぶ大三島(おおみしま)(愛媛県今治市)のワイナリーへ運び、自らも泊まり込みでワイン造りに没頭した。「たるを借りて、実を選別し、足で踏んでつぶして仕込む。温度管理は毎日だった」と振り返る。赤ワイン600本を瓶詰めし、自らの名前、源の訓読み「もと」から「MOTO赤ワイン」と名付けた。ロゴは姫路市出身の絵本作家イヌイマサノリさんにデザインしてもらった。
 自身の農園「しらはた農園MOTO」と赤穂市のワインショップ「ヴァンティーム・マトノ」で販売する。750ミリリットルで3500円。スパークリングワインも同価格。ジュース(720ミリリットル1900円)は完売した。しらはた農園MOTOTEL0791・55・9508

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