赤穂藩主に献上された銘酒「乙女」再興へ 蔵元・奥藤商事が2種の新商品を発売
2021/05/17 05:30
「乙女」の新商品を持つ奥藤利文さん(左)と益田美穂子さん=赤穂市坂越、奥藤酒造
江戸時代、赤穂藩主に献上された歴史のある地酒を時代に合った飲み方で味わってほしいと兵庫県赤穂市唯一の蔵元、奥藤商事(同市坂越)が銘柄「乙女」の新商品を売り出した。きもと純米と吟醸の2種類でラベルや瓶を一新した。同社の銘柄「忠臣蔵」が広く知られ、「乙女」の存在感が薄まる中、江戸期の古文書にも記された銘酒の“再興”を目指す。(坂本 勝)
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回船業などで栄えた坂越の庄屋、奥藤家は慶長6(1601)年から酒造りを続ける。赤穂藩主浅野家の御用酒屋だった。
市指定文化財の柴原家「年中用事控(ひかえ)」には、赤穂藩主森家の7代目忠賛(ただすけ)が家督を継ぎ、天明2(1782)年、初めて赤穂に帰った際、赤穂藩の蔵元で豪商だった柴原家が祝儀として同家の「八千代」と奥藤家の「乙女」の酒だるや、かつお節を贈ったと記される。その後も藩主に就いた忠哲(ただあきら)、忠敬(ただよし)、忠徳(ただのり)が赤穂に戻った際の祝儀品に登場する。
しかし、昭和50年代に誕生した「忠臣蔵」の銘柄が商品の約8割を占めるまで増えた一方で「乙女」はじり貧状態になっていた。
18代目の奥藤利文社長は今後の方向性を模索。コロナ禍で地酒の消費が落ち込む中、同市市史編さん担当の小野真一さんから「江戸時代からの歴史があり、殿様に献上していた『乙女』を大事にしたら」と言われた。乙女をイメージしてほのかに柔らかく、優しい感じの新商品を開発した。
ラベルは同市清水町のデザイナー益田美穂子さんに依頼。ヤマタノオロチからスサノオノミコトが守ったというクシナダヒメの後ろ姿や稲穂を描いた。「昔のイメージを大切に飽きのこないデザインにした」と益田さん。鮮やかな瑠璃色の瓶を吟醸に選んだ奥藤さんは「歴史ある乙女の銘柄を残したい」と語る。
720ミリリットル入りはきもと純米1287円、吟醸1518円。奥藤商事TEL0791・48・8005