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工場内の試打室で指導する藤本誠也さん(右)=藤本技工
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工場内の試打室で指導する藤本誠也さん(右)=藤本技工

■プロの感性、工場で共有

 狙った距離を狙った方向へ打つためのアイアンは、ゴルファーの腕が試されるクラブでもある。スイングの癖やボールがヘッドに当たる位置、角度はもちろん、体格や姿勢も球筋に影響し、スコアに直結する。プロや上級者は自身に合った「一点物」を求めて市川町の工場を訪れる。

 「打ったときにボールが引っかかる」「球持ちが悪い」「抜けが悪い」「曲げて飛ばしたい」…。ゴルファーの表現は感覚的だ。工場の担当者は、打ちたい球筋を想像し、曲げや削り、磨きの指示を具体的に職人に伝える。

 兵庫県市川町の工場で唯一、日本プロゴルフ協会認定のティーチングプロが在籍する藤本技工(同町上田中)は、工場内に試打室がある。ヘッドを特注する人には可能な限り工場に来てもらい、プロの藤本誠也さん(38)と製造担当の藤本雄介さん(38)の前で実際に振ってもらう。2人はいとこ同士。新型コロナウイルス禍の今は、スイングの動画をメールで送信してもらうこともある。

 誠也さんは試打室でアマチュア向けのレッスンを担当。雄介さんは別のゴルフ用品メーカーに8年勤め、ツアープロに支給するクラブの組み立てなどを長く担当した経験があり、「自然とプロが求めるクラブやヘッドの形の大切さなどを学んだ」という。

 プロや上級者が真っすぐに試打することは少ない。通常とは異なる方向へ打つべき場面で、思い通りに飛ばせるクラブを特注するからだ。雄介さんによると「どういう球を打ち、どうやってミスを減らすか。それによってヘッドの形は変わる」。構えたときのヘッドの見え方も心理面に影響を及ぼすため、見た目だけを修正することもある。

 さらに「音の違和感を訴える人もいる」と誠也さん。「カーン」や「バシッ」という音と、打ったときの感覚が合わないそうだ。「要望をヘッドだけで応えるのが無理なときは、スイングの修正とともにクラブを全体として提案することもある」という。

 要望に応じ、ヘッドのどこをどう削るか、どう見えるように磨くかなどは雄介さんが仕様書にまとめ、職人が加工していく。仕様書に加工の理由や要望そのものは書かない。「書いてしまうと、職人さんが余分なことを考えてしまう」。一部の仕様書には「リーディングエッジを丸める」「ソール幅は広めに」などとシンプルに書かれていた。

 2人がうれしくなるのは、納品した客から「ベストスコアが出た」「コンペで優勝した」「周りからクラブが注目される」などの報告が届いたときだ。

 「ゴルフ人口が減っていく中、一人一人に対応できる技術を持ったメーカーが生き残っていく」。そう信じ、ゴルファーの声に耳を澄ます。(吉本晃司)

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