耳が聞こえないってどんな感じ?「手話歌で想像して」 相生拠点のバンドが普及活動

2022/10/26 05:30

手話歌を披露する中村千穂さん(中央)ら=相生市古池本町

 手話の世界を知ってもらおうと、兵庫県相生市を拠点に活動する沖縄音楽バンド「らじらじ」が、「手話歌」の普及に取り組んでいる。耳の聞こえない中村千穂さん(57)=同県赤穂市=が、歌詞に手話を合わせて感情豊かに曲を表現。中村さんは「手話を身近に感じてもらうきっかけになれば」と話す。(地道優樹) 関連ニュース 「手話を使う家庭はうちだけ?」 耳聞こえぬ親から生まれた健聴者「コーダ」の悩みや孤独とは 【動画】耳聞こえない2人組ダンサー プロ目指しコンテストへ ろう者と健常者が共に踊る 耳の不自由なダンサーら手話ダンス曲創作


 夕暮れ時のある日、相生市古池本町で開かれた子ども食堂。子どもに弁当を配るまでの余興で、メンバーは「涙そうそう」など4曲を沖縄の伝統楽器、三線などで演奏し、約30人の親子が聞き入った。
 中村さんは、ボーカルの渡部政弘さん(41)の唇の動きから歌詞を読み取り、リズム良く手話を合わせる。胸に手を当てて寂しそうな表情をしたり、指を組んで星に祈ったり。振り向きざまに渡部さんと指を差し合って驚くコミカルな動きもあり、集まった子どもたちから笑顔があふれた。
 らじらじはインターネットで「相生らじお」を配信する出口勤芳(のりよし)さん(64)が番組メンバーらと2015年に結成。5年前に中村さんが加わり、手話歌を届けるようになった。現在は20~60代の7人が播磨各地の音楽イベントに不定期で出演している。
 中村さんは3歳の時、高熱時に服用した薬の副作用で失聴した。赤穂高校を卒業後、進学した日本福祉大学(愛知県)で手話を身に付け、手話歌にも触れた。だが小学生の頃、音楽の時間に周りと音程をうまく合わせられず、「下手くそ」とからかわれたトラウマが頭をよぎり、やろうとは思わなかった。
 会社勤めの傍ら、13年から赤穂市の手話観光ガイドとしても活動するように。そんな中、ゲストとして相生らじおに出演した際にバンドに誘われた。音楽に対し、どこかで憧れていたことに気づいた。手話歌は手の形や動かし方だけでなく、表情や体の動きでも意味が変わる。表現する楽しさと同時に「自分でも仲間と一緒に歌える」という実感が何よりうれしかった。
 「手話歌を通じて、『耳が聞こえないのってどんなかな?』と想像してもらえたら」と中村さん。新型コロナウイルス禍で演奏の場はなかなかないが、次の出番を心待ちにしている。

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