選挙権が18歳以上に引き下げられた改正公職選挙法の施行から、6月で5年を迎えた。若年層の投票率が伸び悩む中、7月18日には20年ぶりにリーダーが交代する兵庫県知事選がある。この機会に若者は県政にどんな目を向けているのか。関西学院大の学生11人に聞くと、辛口の意見が相次いだ。(末永陽子)
取材は6月上旬にオンラインで実施。まず兵庫県と、現職の井戸敏三知事(75)に対する印象を尋ねた。
ある学生は「(県は)いつも大阪の後追いをしているイメージ。兵庫独自の政策があったとしても、その情報発信が下手」。大阪府の吉村洋文知事(46)を引き合いに、県民へのアピール不足を指摘する声もあった。「吉村知事は良くも悪くも注目を集める。連日のテレビ出演で府民に訴える姿を、好意的に受け止める人は少なくない」
19歳の女子学生は、井戸知事の存在を初めて知ったのが、会員制交流サイト(SNS)で流れた「うちわ会食」のニュースだった。新型コロナウイルス対策で推奨し、批判を浴びたが、「どこの政治家が言いだしたのかと調べると兵庫だったので驚いた。本人もだけど止めなかった周囲にも問題がある」。
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兵庫では若者の人口流出が大きな課題だ。転出者が転入者を上回る「転出超過」が9年続き、昨年は全国ワースト2位だった。
大阪府に隣接する川西市在住の男子学生(20)は、兵庫で暮らすメリットが少ないと話した。「大阪の方が最低賃金が高く働きやすい。医療費などでも子どもを育てやすそう」
「うちわ会食」で井戸知事を知った女子学生は関東出身。高校、大学と兵庫で暮らすが、卒業後は関東に戻るという。「有名企業の本社は多くが東京で、遊べる街も多い。関西は好きなことや得意分野を生かして働ける場所が限られている気がする」と話す。
逆に「兵庫は暮らしやすい」と語るのは、山口県出身の男子学生(19)。「交通弱者が多い故郷に比べて私鉄が多く、インフラが整備されている。住んでいる人が気付きにくい魅力がきっとある」と力を込めた。
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では、7月の知事選に関心はあるのだろうか。
川西市在住の男子学生は「投票に行く」と明言した。「自分の一票を行使しないと、政治家の問題行動やおかしな施策に文句を言う権利はない」と強調する。
別の男子学生も今回、生まれて初めて投票所に足を運ぶという。もっとも「選挙の雰囲気を一度は味わってみたい」のが動機で、知事選については「一票では何も変わらないのでは」と冷ややかだ。
ほかに「興味ない」と切り捨てる声、「不祥事が多く、政治不信は広まっている。『誰が知事になっても一緒』と考える10代、20代は多いのでは」と懐疑的な意見もあった。
地方出身者の場合、兵庫県内に住民票を移していない学生が珍しくない。とはいえ政治に関心がないわけではなく、三重県や福岡県出身の学生は「地元の選挙には行ってみたい」と話す。
広島県出身の女子学生(21)は、4月に帰省して選挙に行く予定だったがコロナ禍で断念。「若者の声を届けるためにも投票したかった。遠隔から投票できる仕組みがあれば」と残念がる。若者が政治や選挙に興味を持ちやすいよう、SNSの積極活用をマスコミに求める声も多く上がった。