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湊山温泉の松富康夫社長(中央)と従業員ら。山と川に抱かれるような立地も魅力だった=神戸市兵庫区湊山町
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湊山温泉の松富康夫社長(中央)と従業員ら。山と川に抱かれるような立地も魅力だった=神戸市兵庫区湊山町
5月10日で閉店が決まった湊山温泉。質の良い天然温泉が人気を呼んでいた(撮影・中西幸大)
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5月10日で閉店が決まった湊山温泉。質の良い天然温泉が人気を呼んでいた(撮影・中西幸大)
湊山温泉周辺地図
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湊山温泉周辺地図

 良質な源泉掛け流しで根強い人気を誇る「湊山温泉」(神戸市兵庫区湊山町)が、5月10日で、77年近い歴史に幕を下ろすことになった。利用者の減少に歯止めがかからず、値上げも限界に。平清盛が湯治したと伝えられ、11年前に廃業した天王温泉と共に「平野の温泉」として親しまれたこの地から、ついに温泉施設が姿を消すことになった。(黒川裕生)

 湊山温泉のかいわいは、温泉地として平安時代から文献に登場する。平清盛の別邸雪御所(ゆきのごしょ)が近くにあったとされ、清盛もこの湯に入ったと伝えられる。明治初期には、住民が組合をつくり経営に乗り出したこともあった。

 現在の湊山温泉は、1938(昭和13)年8月に開業。炭酸重曹泉の源泉掛け流しに魅了され、兵庫県外から通うファンも多い。

 しかし、銭湯離れや進む高齢化で長期的に客数は減り続けてきた。70年代には1日平均1200~1300人だったのが、今では360人ほどに。30円、50円と細かい値上げを繰り返してきたが、この8年間、黒字の年はない。

 社長の松富康夫さん(57)が危機感を覚えたのは2004年。湊山温泉と天王温泉は天然温泉にもかかわらず、水道水利用の浴場と同じ減免措置が講じられており、市水道局が見直したところ、上下水道料金が約4倍に跳ね上がった。

 天王温泉は廃業。じり貧になるのは目に見えていたが、松富さんは「やれるところまで」と踏みとどまった。

 それから11年。昨年の赤字は約400万円に及ぶ。3月上旬、とうとう決断した。

 「えーっ、ほんまかいな」「もう生きていけへん」。張り紙を見た常連客の動揺は激しい。幼少時から通う男性(69)=神戸市須磨区=も「最高の温泉やし、年寄りの大事な社交場やで」と肩を落とす。

 「ここがなくなったら困りそうな人たちの顔が浮かぶ。申し訳ない」と松富さん。「でも、もう潮時です」

 午前7時~午後10時半。大人680円。湊山温泉TEL078・521・5839(水曜定休)

【「関西のレトロ銭湯」著者で銭湯や温泉に詳しい編集者松本康治さん(52)=神戸市東灘区=の話】銭湯仲間、温泉仲間の間でもこの話題で持ちきりだ。すてきな場所にあるすてきな温泉。神戸の歴史的財産、観光資源という目で見ると、単にひとつの温泉施設がなくなる以上の意味を持つ大損失。神戸市民の多くが魅力や価値に気づけず、生かし切れなかったことが悔やまれる。市営にするなど、どうにか営業を続ける道はないのか。みすみすなくすのはもったいない。

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